連載第11回目です。今回は、「財務・会計」の2回目です。
前回(連載④)では、財務会計では先ずは簿記を理解することをお奨めしました。ざっくり簿記が理解できたら、財務諸表の勉強に進むのですが、この時期ですから皆さん既に取り掛かっていると思います。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の3表が取り上げられるわけです。しかし、1次試験の問題をみると、財務諸表全体をみて解答する問題は出ません。これは、2次試験のⅣで出ます。
つまり、1次試験では財務諸表に関する知識を問う問題が出ます。
ということは、財務会計の勉強でもすき間時間の活用が可能です。よく、財務会計の勉強は電卓片手に計算力(計算スピード)を鍛えるという人がいますが、決してそんなことはありません。そもそも、1次試験に電卓は持ち込めません※。
知識は少しの時間でもテキストに触れていたら頭に入ると思います。できれば、卓上ダイアリーやメモ用紙の端っこにでも殴り書きして、用語一つ一つの意味を理解しましょう。
※ちょっと余談ですが、試験に色鉛筆・マーカー・定規は持ち込み可です。実際、問題文のポイントをマーカーで色分けしてチェックする人もいるようですが、本当に効率的なのでしょうか? まぁ、人それぞれですが、普段と違うことはしないほうがいいでしょう。
中小企業診断士試験は、日常の仕事で忙しい社会人が受ける試験です。3分、5分を積み重ねて勉強することが大事です。また、財務会計は60分で25問ですから、1問には最大4分しか時間を掛けられません。問題を一度読んだ段階で、およその答えに到達しておく必要があります。
これには、ある程度の知識量が必要です。
朝や昼間のすき間時間を使って知識を蓄えたうえで、夜に帰宅してから過去問などを解いて知識を定着させましょう。
さて、昨年の試験で財務諸表のB/S、P/Lを提示した設問は問11にあります。
見てみましょう。
この問題は1頁に1問だけですから、ボリュームにビビるのですが、用語の定義さえ確実に知っていたら解けますよね。すき間時間での知識が大事です。
ア ”インタレント・カバレッジ・レシオ”は、日本語の利子補填倍率のほうが分かりやすいですね。「(営業利益+受取利息)÷支払利息」で計算されます。支払利息の何倍の稼ぎがあるのかを示す指標です。数字が大きいほど優良です。
この設問では、受取利息が無いので、営業利益(22,000)÷支払利息(4,000)=5.5。
つまり、インタレント・カバレッジ・レシオは5.5倍ですから、これが正解です。
イ ”固定長期適合率”は、「固定資産÷(固定負債+自己資本)」で計算されます。固定資産への投資が過大ではないかを確認します。1を超えていると危険です。
この設問の固定資産は建物・備品の80,000。固定負債は長期借入金60,000。自己資本は資本金と利益剰余金の合計で100,000。
計算すると、80,000÷(60,000+100,000)=80,000÷160,000=50%になりますから、間違いです。
解答群の80%は分母を自己資本だけにするか、長期借入金を固定負債としなかったか、というミスを期待?しているようです。
ウ ”自己資本利益率”は、「当期純利益÷自己資本」です。名前の通りです。
この設問では、9,000÷160,000=6.33%です。電卓を叩かなくても、解答群の11.3%より小さいことは計算しなくてもわかりますよね。
解答群の11.3%は、当期純利益を税引前当期純利益に置き換えたわけですが、わざわざ税引前で計算することはないです。
エ ”総資本営業利益率”は、「営業利益÷総資本」です。これも名前の通りですね。
この設問では、22,000÷200,000=11%です。
解答群の27.5%は、総資本を資本金と間違った場合ですね。まぁ、そんな人はいないでしょうから、これはサービスですね。
この問題でもわかるように、用語の定義を抑えることが重要です。
財務会計は100点満点を取る人がいる(多い)と聞いたことがあります。1次試験の7科目中で、他の6科目は間違っても満点は取れない?と思いますから、勉強し甲斐があります。
財務会計は時間をかければかけるほど点数が上がる科目ですから、しっかり勉強しましょう。