単純化したゲーム理論では、ハト派戦略がタカ派戦略に優ることは確かです。
タカ派戦略とは、自分が勝つまで徹底的に闘うという戦略です。自分が勝ったときは相手が傷ついて(時には滅んで)います。自分が負けたときは自分が死んでいるかも知れません。
一方で、ハト派戦略は、相手が闘ってきたら引き下がって逃れるという戦略です。
タカ派とハト派、どちらの戦略が優るかを確かめてみます。ゲーム理論の利得表は上のようになります。例えば、A国とB国の間にどちらのものとも決まっていない領土があるとします。この領土の価値が10兆円だったとします。
A国もB国もタカ派戦略で徹底的に闘ったして、A国が勝った(B国が負けた)とします。このときのA国のコストが5兆円、B国のコストが15兆円とします。A国は5兆円の利益を得たことになりますが、両国合計では10兆円のマイナスです。
これが、A国もB国もハト派戦略をとったら、両国は仲良く5兆円づつの利益を得ることができます。どうでしょう、ハト派戦略こそが取るべき戦略です。
・・と、言いたいのですが、ことは単純ではありません。
もしA国がタカ派でB国がハト派の戦略をとったなら、A国はコストをかけずに10兆円の利益を得ることができて、B国は利益ゼロです。ちょっと残念ですよね。さらに、力をつけたA国はB国の領土も少しづつ取りにくるかも知れません。要注意です。
また、世の中に2つの国だけがあるのではないので、他の国の戦略も考えないといけません。例えば、周辺国が全てハト派戦略を取る国ならば、タカ派戦略を取れば戦わずして大きな利益を得ることができます。逆に周辺国が全てタカ派戦略であれば結果として共倒れになって、ハト派戦略の国のほうが有利になります(但し、自国の領土が周りの国から決まっていない領土と認識されない程度の自衛力がある前提ですが・・)。
ビジネスにおいても、タカ派戦略とハト派戦略、どちらを選択するかは難しいところです。あえてヒントを言えば、競合各社の戦略を分析して、思い切って少数派の戦略を取るのが正解に近いと思われます。