VMIは、Vendor Managed Inventory(売り手が管理する在庫)という意味です。
近年、自動車製造業など組立型産業でVMIが脚光を浴びています。ちょっと説明します。
1)自動車会社が一定期間の生産計画を複数のベンダーに流します。
2)ベンダーはその計画を確認して、自動車を組み立てるのに必要な部品を必要な数だけVMI倉庫に入庫します。この時点で、この部品在庫はベンダーが所有し、管理しています。
3)いよいよ組立する段階で、部品はVMI倉庫から出庫します。この時点で、部品の所有権が移動した(つまり売り上げが立った)ということになります。
VMIによってバイヤー(買い手)側は在庫が削減できますから大きなメリットがあります。ベンダー側は顧客の生産計画が事前に正確に把握できるというメリットと、売り先が安定して確保できるというメリットがあります。
VMIに似た方式にコック方式がありました。コック方式は、VMI倉庫ではなく顧客の敷地内に納入した部品の所有権をベンダー側が保有する仕組みです。水道のコックをひねるように必要なときに部品が入手できるという意味です。
私が勤めていた工場でも一部にはコック方式を導入していました。化学工場ですから、自動車など組み立て工場のように製造部品ではありません。設備保全の部品や備品などです。
ボルト・ナット・ベアリング・Vベルト、pH計・温度計・センサー類などは、設備保全室の所定の棚とか引き出しのなかに商社さんが自動的に納入します。この在庫は売り手である商社さんの所有であり、工場の資産ではありません。
実際に使用する段になって、棚や引き出しから取り出した時点で所有権が移動します。
その後(毎日とか毎週とかチェックする時期は異なる)、商社さんから請求書が届いて、使用した分だけの費用を払い込みます。また、使用した分の部品は商社さんが補充しますから、常に一定な在庫が工場内にあるわけです。富山の薬売りのようなシステムです。
現在では、このコック方式は下請代金法上の問題があるとして認められていません。VMIはコック方式の法的課題はクリアしながら、メリットを受け継いだ方式です。
ただ、コック方式(あるいはVMI)のような簡易購買調達の仕組みを下請けいじめと非難するのも実は間違いだと思います。バイヤーとベンダーの間にきちんとした信頼関係があって、適切な在庫水準で合意できていれば、総合的にみて、無駄な在庫が縮減できる効率的な方法と言えます。一律に禁止するものでもなかったような気がします。