オピニオンリーダーのいない世界

テレビではMCを務める辛坊治郎さんや、ニュースを読み解く池上彰さんばかり発言します。

 

山中伸弥(オピニオンリーダー)
山中伸弥(オピニオンリーダー)

オピニオンリーダーとは、ある集団のなかで、その人の意見が強い影響力をもっている指導あるいは先導的な者のことです。以前は、どんな集団でも、影響力を持ったオピニオンリーダー、あるいは先見の明を持ったビジョナリーと呼ばれる人がいたものです。

 

昔は、人々が多くの1次情報に直接触れることが難しかったからです。新聞でも朝日新聞を読んでいる人は産経新聞を読んでいませんでしたし、山口県の人が福島県の地域ニュースに触れる機会は限られていました。

 

このため、多くの1次情報を把握して咀嚼して、ポイントになるところを見極めて解説する人が求められていました。現在でも、再生医療の分野での山中伸弥教授などは、その分野のオピニオンリーダーとして認められています。山中教授の提言や活動には、大きな共感を持たれます。これは、今日でも再生医学の領域の情報が高度で、且つ秘匿性が高いからのことです。

 

しかし、政治・経済・社会問題など、ある程度広い領域ではオピニオンリーダーと呼ばれるような人がいなくなりました。かろうじて長谷川慶太朗さんや野口悠紀雄さんが、その役割を果たしているかも知れません。

 

また、狭い世界でもオープンな情報の世界では同じです。私の勤めていた会社は音楽テープの原料を作っていたのですが、当時はオーディオ雑誌に有名音楽評論家が「ソニーの○○の音がいい」と書くと、そのテープが爆発的に売れたりしていました。今は、そんなことで売れ行きが変わることは少ないでしょう。

 

あらゆる人が1次情報に自由にアクセスできるようになりました。誰でも、聞きかじりの耳学問でいっぱしのことが言えます。テレビでは、辛坊さんや池上さんが専門家の発言を途中で遮って、自分の意見(?)を滔々と述べる場面が目につきます。

あんたの意見なんか求めていないと言いたくなって、ちょっと気に入りません。

 

一方で、ビジネスをする側としたら、この変化は重要です。いかに素晴らしい商品を開発して目利きと言われる人が絶賛しても、その商品が売れるということは少なくなりました。未だに「○○シェフが絶賛する△△」とPRするお店もありますが、効果は限定的でしょう。

オピニオンリーダーの影響力ではなく、消費者の感性に直接的に働きかけることが大切になってきています。