【日曜連載】中小企業診断士試験合格への道標➄

連載第5回目です。今回は、1次試験の3つ目の科目「企業経営理論」について書きます。

 

ビジネス資格に兆戦
ビジネス資格に兆戦

企業経営理論は3つのカテゴリーからできています。「経営戦略論」「組織論」「マーケティング」です。

 

まぁ、これは個人的な見解ですが、中小企業診断士を目指そうかと思うような人は、この領域は興味が深いところでしょう。”好きこそ物の上手なれ”で、この科目の勉強はあまり苦にならないように思います。

 

自分の仕事に活かすとか、現実にある企業の戦略と比較するとか、試験勉強を超えて学習することにもなりそうです。

 

これほど面白い科目なのですが、やはりポイントは、用語の定義を正確に覚えることです。会社に勤めると実感するのですが、教科書に出るような活動はしていても、異なる用語を使っていることがあります。試験で出る用語で覚えることは、合格のためには重要です。

 

さて、昨年の試験問題から第1問を見てみます。 



どうですか? ちょっとややこしいですね。先ずは用語の定義を確認してみましょう。

 

問題を読むときに、用語を○で囲むと分かりやすいですよ。

多角化した企業  ・・複数の事業ドメインを手掛ける企業のことです。

ドメイン     ・・領域・フィールドのことです。

事業ドメイン   ・・企業に手掛ける事業の領域・フィールドのことですね。

企業ドメイン   ・・企業全体の活動する領域・フィールドのことです。

事業ポートフォリオ・・企業が手掛ける事業ドメインの組み合わせのことです。

(ポートフォリオは”札入れの財布”とか”書類入れの鞄”とかが本来の意味です。)

アイデンティティ ・・企業への帰属意識。企業文化とか企業ブランドのことです。

事業間の関連パターンが集約型・・事業の関連性が強いという意味です。

(逆は拡散型で、事業の関連性はあるが薄いという意味です。)

範囲の経済    ・・複数の事業を同時に手掛けると、独立にするよりコストが割安になるということです。(この逆は規模の経済で、事業の規模が大きくなるほど、単位当たりコストが割安になることを言います。)

 

用語の意味を確認しても、やっぱりややこしいですよね。ちょっと解説します。

 

先ず、アは、多角化した企業のアイデンティティを決めるのは個別の事業ドメインではなくて企業ドメインあるいは事業ポートフォリオのほうですね。誤りです。

実は、イ・ウ・エも同じような誤りで、事業ドメインを事業ポートフォリオに替えるとか、事業ドメインを企業ドメインに替えるとかで、それぞれの文章が成り立ちそうです。

設問では「企業のドメイン」と書いて、選択肢で「企業ドメイン」「事業ドメイン」と使い分けているところが少々あざといですね。しかし、ここでくじけてはいけません。

 

というわけで、オが正しいです。キーワードは「集約型なら範囲の経済」です。経営戦略として、”範囲の経済と規模の経済”はよく取り上げられます。

 

事業間の関連パターンが集約型、つまり関連性が強い事業どうしなら、範囲の経済を重視します。例えば、サントリーのような飲料会社が健康食品事業を手掛けるような場合ですね。

逆に事業間の関連パターンが拡散型であれば、規模の経済が重視されます。現業で獲得した多額の資金を新規事業に一気に投入するような例です。クボタのような優良な農業機械メーカーが海外で大規模農業を手掛けるような場合です。

 

ちょっとネタバレ的ですが、オの「範囲の経済」という用語にピンとくれば、実はこの問題は簡単なんですね。まぁ、落ち着いて文章を読むということが大事です。