働き方改革では、労働時間の短縮がメインのテーマです。
確かに、労働時間が短くなるということは良いことです。上司や仕事(たいていは納期)に拘束される時間が減って、自由に仕える時間が増えるわけです。
しかし、現実に世の中に存在する仕事の総量そのものが減るわけではないので、単位時間内にこなす仕事の量を増やさないといけません。
そこで、高速大容量通信を利用したIT(IoT)の利活用であるとか、AI(人工知能)の活用といった対応が進んでいきます。働く人は楽になっているようですが、実は忙しくなっていきますね。
私が会社に入った頃は、東京出張はブルートレイン「あさかぜ」の利用でした。東京駅を午後8時に出発した「あさかぜ」が宇部駅に到着するのは翌朝の9時です。瀬戸内海の朝の光のなかを悠然と走る列車には、仕事ではあっても旅情が溢れます。確かに拘束時間は長いのですが、結構楽しい時間でもあります。
報告書はもちろん手書きです。さすがに青焼きは無くなっていましたが、所定の様式に丁寧な文字で書いていました。楷書で一字一字綺麗に書きます。書き損じすると、書き直しに時間がかかるので、最初にざら紙に下書きをしてから書きます。今思えば、非効率で労働時間は長くなるわけですが、文字に気持ちが表れています。
現在であれば、山口県から東京出張は過半数は飛行機利用で1時間半です。普通の会議であればウェブ会議で済ますでしょうし、そもそも情報共有が進んでいるので改めて会議をすることもないでしょう。事業戦略や経営企画なんてのもAIを利用して、ある程度の結論は既に出ているわけですから、後は責任者が形式的に承認すれば足りたりします。
仕事が楽になる、つまり労働生産性が向上して、労働時間が短縮される。このことは確かに楽になることですが、放っておくとむしろ忙しくなるかも知れません。労働時間だけではかれないものがあります。会社が、従業員が、これらを意識をして、心を豊かにする働き方を考えないといけませんね。