横綱/日馬富士が前頭/貴ノ岩に対して暴行して障害を負わせたという事件です。
今日、日馬富士が引退を申し出ました。普通の会社だったら、どうなっていたのですか?という質問です。
イメージとしては、営業部には3人の部長と1人の部長代理がおりまして、いつも仲よくしていました。
違う部署(例えば開発部)の係長は同郷だけど常日頃から生意気だと気に入りませんでした。係長のほうも嫌われていることを知っていたので、プライベートでは部長連を避けていたのですが、部長代理とは同じ高校ということもあって時々会っていました。
部長代理から同窓会の誘いを受けて参加したところ、何故だか3人の部長が卒業生でもないのに出席していて・・・。という流れのようです。
これに営業畑の社長、営業部を所管する取締役、傍流の開発部担当の取締役の軋轢が重なります。老舗の会社なので、利害関係者も多数おり、いろいろ意見を言います。
普通の会社だったらどうするかです。
仕事柄、いろいろな会社の就業規則を見ます。各社ともに懲戒の項目はかなりの分量があります。何故なら、就業規則に書いていなければ懲戒処分を科すことができないからです。
懲戒の章は3項あるパターンをよく見ます。
1)【懲戒の種類】は少なくて4段階、多い会社は8段階くらいあります。「口頭注意」から「懲戒解雇」までですが、「口頭注意」はなくて「譴責(始末書提出)」から始まる場合もあります。「降格」とかは設けていない会社も多いでしょう。
2)【懲戒の事由】は、それこそ多い会社だと20~30という場合もあります。思いつくだけ、全部書いとけって感じです。でも、このやり方が正しいのです。
3)【懲戒証明書】は、従業員から請求があったら懲戒の理由を記載した証明書を出すということを書きます。
さて、今回のケースが普通の会社で起こっていた場合を考えます。
先ず、直接暴行した部長には直ちに1次的な処分を出すはずです。
当該者が有給休暇の取得(休場)を申し出ても認めないで、出勤停止(出場停止)にするのが普通の会社です。停職は仕事をしないというわけですから、給料は出ません。
相撲協会では、事件の存在がわかり、本人が暴行を認めた九州場所3日目に「出場停止」を申し渡すべきでした。これに部屋での謹慎と飲酒の禁止を加えても妥当でしょう。
この時点でこういう常識的な処分をしていたら、被害者側も協会に協力しようという気持ちになったかも知れません。
その後は警察の捜査次第ということになるのですが、今日までの情報から考えると普通の会社なら「懲戒解雇」でしょう。もし甘い会社で「諭旨退職」が規定されていたら、これに該当するかも知れません。自己都合退職(引退)の申し出を認めないという選択肢もありそうです。
ちなみに、被害にあった係長に取締役会に出て事情を話すように命令するということは非常識です。普通の会社では絶対やりません。
一方で、担当の取締役が取締役会に報告しなかったというのも、また非常識です。これも普通の会社ではあり得ないと思います、
尚、手を出していないという前提ですが、同席していた残り二人の部長には「譴責」処分が考えられます。普通は「始末書」を書かせます。何も処分をしないということは、考えられないでしょう。
もちろん、係長の日頃の態度云々は懲戒の対象にはなりません。相手の態度が気に入らないから暴行したことを情状として斟酌するような会社は危険です。
会社の懲戒処分にはいくつかの原則があります。先に書いたように、就業規則に書かれていないことで懲戒処分をしてはいけない。懲戒の理由は開示しなければならない。社内の適正な手続きが必要である。などです。当然、起こした事由に対して、重過ぎる懲戒は無効です。懲戒の理由や判断に至った手続きなどは全て記録して保管します。
懲戒の原則で、特に重要なのは「全労働者の平等」です。
この人は、仕事ができるから懲戒を軽くする、あるいは日頃の態度が気に入らないので懲戒を重くするということはできません。部長だから、係長だから、新入社員だから、という理由で懲戒の対象になるならないということをしてはなりません。
普通の会社で最も問題になるのが、この平等というものです。一旦、特例をおこなってしまうと、未来永劫の禍根を残すことになります。規則に合わせて厳格に運用することが大切です。