ITに金を掛けるな。ITに期待をするな。

全国で開催中の「プラスITセミナー」に参加して、たいへん有意義でした。

 

経済産業省中小企業庁は、中小企業・小規模事業者がITを利活用することにより競争力を強化することを目的とした「プラスITセミナー」を、本年4月から、日本全国100箇所の各地の商工会議所にて開催しています。毎週1回×4日のセミナーを受講して、大変有意義でした。

 

中企庁「プラスITセミナー2017」
中企庁「プラスITセミナー2017」

先ず、繰返し紹介されるのが「クラウド型ITサービス」です。ブロードバンドの普及・スマホやタブレットの登場と合わせて、低コスト(あるいは無料)で利用できるITツールが揃ってきています。

中小企業はITツールにお金を掛けるのではなく、クラウド型の低コスト(無料)ツールを使いましょうということです。

 

SKYPE(無料通話・テレビ会議)、サイボウズ(グループウェア)、Airレジ(POSレジ)、シフオプ(シフト管理)、クラウド会計各種、などが紹介されました。

よほどの大企業でもなければ、自社専用のITツールを開発して導入するのはコストが勝ちますから、既存の低コストクラウド型ITツールを活用したほうが良いというわけです。セキュリティーなどの心配もしてしまいますが、中小企業レベルではクラウド型の方がむしろセキュリテイーレベルは高いようです。

 

次に、一般的に設備を導入する投資を行う際には、先ず目的目標を明確にすることが重要です。しかし、ITツールの投資では、目的目標を明確にすることが現実的ではありません。

仮に、しっかりした目的・目標があったとしても、ぴったり合ったITツールが無ければ自社で開発するというわけにはいきません(仮にメガバンクやトヨタでも)。既存のITツールを試行錯誤で使ってみるということになります。

 

そこで、IT経営大賞を受賞された会社の社長さんが講演してくださいました。ITツールの導入に際しては、既にITツールを導入している企業を何社も訪問して、その使い勝手や導入効果を見学したそうです。そうして、自社のビジネスに最もマッチしたツールを導入しました。目的・目標ありきでは、IT導入はうまくいかないようです。

 

最後に、例えば顧客管理などにITツールを活用しようと考えた場合です。先ず、集めるデータの種類が限られるということに気づきましょう。

 

例として、商店街にある年商2000万円の洋菓子店のケースを考えます。比例費率50%、年間固定費300万円として粗利益700万円。夫婦二人で経営しています。

この店の客単価が1000円ならば、年間延べ2万人が来店するという計算です。月に何度も来るお客さんもいますが、年に1度以上来店するお客さんだけでも2000人以上になります。そこで、顧客管理をITツールで・・と考えるわけです。

 

では、どんな情報を入手するかですが、DMを出すために住所情報を集めたとします。逆に言えば、住所情報を集めた以上DMは出さないといけません。出さなければ、お客さまに不信感を与えるからです。2000人に年2回DMを発送(年間4000通)するには、どれだけの時間(とコスト)がかかるかを想像するだけで、やめた方がいいとわかります。

 

顧客管理をしたいと考えた理由は、ビジネスで利益を上げることです。2000人を管理すると考えるとITツールで・・となるわけです。しかし、お店にとってたいせつなお客様は2000人ではなくて、出張の都度に手土産用の焼き菓子を購入してくれる近くの会社の社長とか、月に一度のお昼の集まりにケーキを10個買ってくれるママ友会だったり、せいぜい100人か200人です。これなら、高価なITツールを導入しないでも、覚えられますよね。

 

かなり乱暴なまとめですが、「中小企業はITにはお金を掛けず、低コストのクラウド型サービスを利用すべし!」「ビジネスでの儲けや同業者との差別化には、ITツールが決め手にはならないと心得よ!」ということです。

賢くITツールを使って、事業を発展させていきましょう。