いろいろ話題になっているので、ちょっと調べてみると、驚きました。
先ず、獣医学部のある大学がとても少なくて、定員も少ないということです。
国公立では11の大学に獣医学部があるのですが、そのなかに4組の共同獣医学部というのがあるので、実質は7学部です。単独で獣医学部があるのは、東京大学と宮崎大学の2つだけで、公立は大阪府立大学1つです。
共同獣医学部というのは、単独の大学では十分な教育や研究ができないので、二つの大学で共同して学部を運営しようとするものです。山口大学の場合は、鹿児島大学と共同獣医学部をそれぞれ30名の定員(合わせて60名)で運営しています。他に、北海道大学と帯広畜産大学、岩手大学と東京農工大学、岐阜大学と鳥取大学が共同の課程を組んでいます。
ここまで、国公立大学の単年度定員は370名です。
私立大学は5大学で単年度定員は560名です。北海道にある酪農学園大学以外の4大学は首都圏にあります。日本大学、北里大学(キャンパスは青森県)、麻布大学、日本獣医生命科学大学です。国公私立大学合計の単年度定員は930名になります。
ここで、農林水産省のウェブサイトで獣医師国家試験のデータを検索すると、過去5年間の受験者は新卒で1009人から1058人です。獣医学部を卒業しても獣医師試験を受けない人も当然いるはず(獣医以外の仕事に就く)です。つまり、各大学はかなり定員を超えて学生を受け入れているようです。
一般に国公立大学は定員を超過させる理由がないので、そのままとすれば定員560名の私立大学5校で150人以上の定員超過(25%くらい)になっていると予想されます。在校生の数を見つけられた日本大学のサイトを見ると、定員の1.16倍が在籍していました。他の4校は分かりません。定員オーバーは、教育水準の低下につながりますから、今治市に160名定員の獣医学部新設は、これだけ見ても納得です。
獣医師の届出数は、約4万人です。毎年、大学の入学定員を超える1000人ほどが、新たに届出をしています。
現役で獣医事に従事しているのは3万5千人ほどです。そのうち、ペットなど小動物診療に携わる人が最も多くて1万5千人、公務員が1万人、産業動物(主に家畜)診療に4千人、その他(製薬会社・飼料会社・研究機関等)6千人といった割合です。
近年の傾向は、獣医学部の学生の半数が女性で占められていることもあって、小動物診療が特に人気があって、需要が多い都市部に獣医師は集まっていくようです。
一方で、地方の動物病院は獣医師を確保できず、公務員獣医師や家畜の獣医師は慢性的に不足していて、口蹄疫やBSEなどの課題に対応できないことが問題になっているようです。多くのメディアで報道されています。
☞ 例えば、朝日新聞「公務員獣医師が足りない 家畜よりペット、学生流れる」
まぁ、詳しくはわからないのですが、獣医学部を新設する必要性はありそうな印象です。