ふるさと納税の趣旨を忘れないのは当然です

高市総務大臣がふるさと納税に対して過度な返戻品をしないように通知を出し、各自治体で混乱していることがニュースで話題になっています。

 

今朝、民法のニュースショーで元官僚のコメンテーターさんが、「ふるさと納税の返礼品が華美でもいいじゃないですか。その地域の事業者の商売につながるのですから。規制するのはおかしいですよ。自治体は損をするようなことはしないのですから。」と言われていました。

ちょうど、500万円のふるさと納税をしたら、300万円のキャンピングカーを返礼品として差し上げるという話題の後でした。

コメンテーターさんというものは、たいていトンチンカンなことを言うものですが、経産省の元官僚さんがこんなコメントを言うようでは、ふるさと納税の趣旨は完全に忘れられているということです。

 

ふるさと納税という仕組みは平成20年度に開始されたのですが、最初の5年間の納税額の推移は、81億円→77億円→102億円→122億円→104億円(平成24年度)とそれほど大きな額ではありませんでした。

これが、平成25年度に145億円、26年度に389億円、そして平成27年度は1653億円と大幅に増加しています。平成28年度は更に大きな額になっていると想像されます。

 

これほどふるさと納税が増加した要因は、ふるさと納税が本来の趣旨を離れて豪華な(お得な)返礼品を安く手に入れるという行動です。実質2000円で1万円分の返礼品が手に入るということがマスコミなどを通じて、広く知られるようになりました。思えば、制度開始の頃は、感謝状とか市町村のマーク入りペンダントとかが返礼品でした。

 

地方のふるさとで生まれ育った人が、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税している。その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入らない。また年をとって、老後は故郷に戻ろうとも思っているので、いくらかでもふるさとに納税しておきたい。というのが、本来のふるさと納税の趣旨です。

 

今や、ふるさとも何も関係なく、豪華な返礼品が貰える自治体にふるさと納税が集まっています。東日本の震災の後に、被災自治体にふるさと納税が集まったのは、まぁ好いとしても、現状はやはり異常ですよね。

 

 

 

平成27年度の都道府県毎のふるさと納税額を並べたグラフです。北海道の各自治体合計がトップで、返礼品が人気の天童市がある山形県が2位、自治体別ランキング1位の都城市がある宮崎県が3位となっています。

これらの自治体では、仮に2万円のふるさと納税を受けて、1万円相当の返礼品を返しても1万円の儲けです。できるだけ、豪華な返礼品を企画するのは当然です。

 

 

一方で、ふるさと納税をすると、その納税額に応じて現在の住所で納税する地方税に控除があるわけです。都道府県別の控除額を並べたのが下のグラフです。

 

当たり前ですが、東京都、神奈川県、大阪府の順で控除額が大きくなっています。これらの自治体では税収が減ることになります。実際は不交付団体である東京都と全国76の市町村を除けば、国が減収分の大半を負担します。

つまり、都会の自治体と国は得られたはずの税収を失うことになります。例えば、東京都の自治体から、失った140億円があれば保育所が整備できたはずだったと言われるのは困ります。

このあたりで、歯止めを掛けないといけませんね。そもそもで言えば、「ふるさと」に限定する方法を考えるべきでしょう。