中小企業の生産性は全体として向上する傾向ですが、小売業は出遅れています。
右のグラフは中小企業実態調査にある法人中小企業の業種別付加価値額を従業者数で単純に割り算したものです。=従業者一人当りの年間付加価値額。
中小企業全体では平成25年から平成27年にかけて4.1%向上しています。建設業は4.8%、製造業は4.0%、卸売業は7.8%の向上ですが小売業は横ばい(-0.04%)です。中小小売業の生産性を向上させることは重要な課題です。
中小小売業なかでも生産性を左右するのは、やはり規模で小規模なほど、店舗が狭いほど生産性が低くなっています。また、人口密度が高い地域ほど生産性が高く、過疎地ほど生産性が低くなります。規模の経済性です。
また、食品小売りの場合ですと食肉や鮮魚などの生鮮品を取り扱う店舗の生産性は高く、菓子・パンなどを販売する店舗の生産性は低いのですが、これも納得です。
中小小売業の生産性向上の方法として、ネットワーク化があります。中小事業者がネットワークを形成することで、全体として規模の経済性を獲得する仕組みです。
ネットワーク化というと、コンビニや外食などに代表されるフランチャイズチェーン(FC)が頭に浮かびます。FCの場合は、商標も商品も統一されて、業務は効率的になり業容を早く拡大するのは効果的ですが、経営の自由度は低くなります。
ネットワーク化のもう一つにボランタリーチェーン(VC)があります。FCが本部と加盟店の1対1の契約によって成立しているのに対して、VCは加盟店の自発的(voluntary)な連鎖(chain)です。商標や商品の統一も緩やかで、VCに加盟していることは店舗の運営からは一見してわかりません。
しかし、日本ではVCはあまり普及していなくて、中小小売業で加入しているのは1%未満です。国内最大のVCである全日食チェーンでも加盟店1800で売上高3500億円という規模です。比較して、欧米ではアメリカのマックレーンやフランスのレクレールなど売上高4兆円規模の大型チェーンもあります。日本でもVCが能力を向上し、認知度を上げて加入者を増やすことは生産性の向上に貢献しそうです。
地方の中小小売業は地域に根差して活動します。高齢化や過疎化で買い物に困っている人を助ける役割も担っています。大手流通業との競争に負けて撤退しないで、事業を継続するためにはVCへの加入を検討することは有効かもしれません。