生後6か月の男の子が、蜂蜜が原因と見られる乳児ボツリヌス症で死亡したという報道です。
亡くなられた赤ちゃんとご両親には何とも言葉がありません。ご冥福をお祈りします。
さて、ものづくりの現場では失敗や故障があれば分析をして再発を防止します。よく使われる手法がFTA(fault tree analysis)というもので、「故障の木分析」とか言います。
しっかりと分析をして、二度と起こらないようにしなければなりません。
今回の事例で言えば、「ハチミツを1歳未満の乳児に与えない」という、何となくみんなが知っているように思えた知識を親御さんが持っていなかったことが一つの要因です。もちろん、死亡に至るにはそれ以外の要因も関わっていたと思いますので、その検証も必要です。特に、生後6カ月と新生児ではないので、他の因子も疑われます。
これ以上の情報が無いので、仮に失敗の原因を「無知ー知識不足」と置いてみます。FTAでいうところの「知識不足」は周りの人は皆知っていたが担当者だけが知らなかったという場合です。ちなみに、「理解不足」「伝達不足」「注意不足」などとは微妙に異なります。
「知識不足」への対応は、最も難しいことの一つです。
「ハチミツの乳児への忌避」は、確かに母子健康手帳に記載がありましたが、離乳食の注意のところに以下のように書いてあるだけです。
「① 離乳の開始では、アレルギーの心配の少ないおかゆ(米)から始める。新しい食品を始め るときには一さじずつ与え、乳児の様子をみながら量を増やしていく。慣れてきたらじゃ がいも、野菜、果物、さらに慣れてきたら豆腐や白身魚など、種類を増やしていく。はち みつは乳児ボツリヌス症を予防するため、満1歳までは使わない。」
ちょっと見落としそうです。
また、大手メーカーが販売する市販のハチミツには「1歳未満の乳幼児には与えないでください」という注意が書いてあります。今回のケースは不明ですが、ハチミツは大手だけが販売しているわけではないので、注意が無い場合もあるでしょう。
最初にあったように、死亡例は全国初というほど稀なことです。このような事例の再発防止は非常に難しいことです。
このような場合、ものづくりの現場では「ハインリッヒの法則」に従って、ヒヤリハット事例の収集と対策をします。「ハインリッヒの法則」は”1対30対300の法則”と呼ばれるもので、1つの重大事故の後には30の小さな事故があり、さらに300のヒヤリハット事例が隠れているという法則です。
今回の死亡例の親御さん、ただ一人が「知識不足」だったということではないはずです。背後には、ハチミツを与えて乳児ポツリヌス症を発症したが入院治療の結果回復したような事故が30件、赤ちゃんの具合が悪くなってお医者さんに飛び込んだようなヒヤリハット事例が300件あったかも知れません。
こういう事例をできるだけ広く知らせて、「知識不足」を補っていくことが大切です。また、小さな事故の段階で、適切な処置を取ることも大切です。
ジレンマとしては、対策を取るほど事故の発生頻度は下がるので、忘れていってしまいます。過去の事故事例に学ぶことで、危険を察知することを怠らないことです。