電通の新入社員さんが過重労働によって自殺した事件もあり、メンタルヘルスが再認識されています。
電通は日本のメンタルヘルスケアにとって歴史的に最も重要な企業です。
日本では、1999年に自殺を労災とする新しい労災認定指針が示され、2000年に厚生労働省がメンタルヘルス=労働者の心の健康保持増進=の指針を出した頃が大きな転換点です。
このきっかけが、1991年の電通の若手社員(当時24歳:入社2年目男性)の過労自殺でした。世に言う「電通事件」です。
バブル時代の喧騒で浮かれていたのかも知れませんが、電通は自殺の責任を個人に押し付けて会社としての最低限の責務すら取ろうとしませんでした。幹部はおろか社員の一人も、葬儀に参列しなかったそうです。
家族は自殺した息子の無念を少しでも晴らそうと訴訟を提起します。
1996年に一審の東京地裁は会社の責任を認めて1億2600万円の賠償金支払いを電通に命じます。電通はこれを不服として控訴し、二審の東京高裁は1997年に本人の性格などにも原因があったと賠償額を相殺して8900万円の支払いを命じます。
2000年に最高裁が会社の責任100%(個人の責任は0%)と認定して、高裁判決を破棄して高裁に差し戻します。つまり、本人の性格(この場合、真面目で完璧主義、責任感が非常に強い。辛くても休まない。といった性格だそうです。)というのが通常の社会通念から大幅に外れていない限り、減額の要素にはならない。と判断したのです。画期的な判断です。
結果として、差戻審で電通が1億6800万円を支払うことで和解しました。
日本のメンタルヘルスにとって、電通は典型的な反面教師です。前回の電通の無茶な対応によって、法の整備がされ、企業の在り様が変わってきました。
勤務が原因である自殺者数を減らした功労者でもありました。ただ、自らが完全に変わることはできなかったのです。
昨年(自殺されたのは2015年のクリスマス)の「第二電通事件」において、政府の対応は異常なほどに迅速でした。家宅捜索なども、非常に早い段階で実施されました。電通サイドの改善プランの着手も早かったですね。これらは、メンタルヘルスに対する電通という会社の特異な位置づけから来ています。今度こそ、変わらないといけません。
・・余計なことですが、安倍総理夫人が結婚まで勤めていた会社が電通なんだそうです。頑張りすぎるのはよくないですね。