この法律は、建設業界にとっては、結構革新的なものです。少しだけ紹介します。
昨年12月12日に国会で成立した法案です。正式には「建設工事従事者の安全および健康の確保の推進に関する法律」と言います。施行は成立の3か月後と決まっており、来週の3月16日に施行されます。
この法律の要旨は、建設工事に従事する人の安全や健康の確保に必要な経費を工事契約で明確に積算し、明示し、支払うことを求めています。
併せて、下請け関係の適正化、労災保険関係の状況把握、現場の安全を点検し評価、安全に寄与する資機材や施工方法の開発、安全意識の啓発などをおこなうものです。
そんなの当たり前ではないか?と思われますが、建設工事の現場では当たり前でなかったのです。国や自治体が施主である場合も含めて、価格重視で安全軽視の工事契約がかなりありました。労働安全衛生法の規定を順守できないレベルの契約もみられます。
例えば、建設現場で最も多い事故は墜落ですが、墜落防止措置を講じた足場を設置すると費用がかかるという理由で、契約仕様から外すことはよくあります。また、建設事業者の事情と関係なく納期を設定して、悪天候時や夜間工事や、長時間残業や連続勤務を強いるようなこともしばしばおこっていました。
まともな工事では、施主と元請の大手業者との契約に安全や健康管理の費用が見積もりされています。ところが、下請け・孫請けとなるにつれて、安全や健康管理の費用が、いつの間にか消えていきます。今回の法律では、これはできなくなります。
ようやく、建設工事従事者の安全と健康の確保と処遇の改善と地位の向上に取り組む基本が法律として整備されました。労災保険料を含む安全と健康に関する経費を、公共団体を含む発注者が適切に支払うことになります。
まぁ、はっきり言って建設コストは上がります。しかし、それは今までが本来必要なコストより安かったのです。それも、工事従事者の安全と健康を損なう犠牲の上にです。
法律の正しい運用で、建設業界の近代化と活性化につながると期待しています。
法律の条文は以下参照。
☞ 参議院法制局 http://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/pdf/192-054yk.pdf