人は事実を信じないで、過去のパターンとか、過去の判断結果の方を信じるものです。
例えば、過去から繰り返されている事象は、これからも必ず繰り返されると思い込む。
これまで大丈夫だったのだから、次も大丈夫だと確信する。という感情です。
10%の確率で事故が起こるとすれば、過去20回続けて事故がおこっていないとしても11回目の今回事故が起こる確率は、やはり10%あります。しかし、人は、これまで事故がおきなかったのだから、今回もきっと安全だろうと思いこむものです。
逆に、機械を動かすと1%の確率で事故が起こるとして、前回まさに事故が起きたとすれば、次も事故が起こるだろうと思い込みます。もちろん、確率は1%です。
また、1%の確率で事故が起こる場合でも、周りの何人かが大丈夫だと機械を動かしてみて事故が起きなかったなら、我も我もとそれに続く人が出てきます。
こういったことを総合して、正確度のバイアスです。
事実を信じる(強く言えば、事実だけを信じる)という感覚を意識することは大切です。
よくある例では、火災発声の非常ベルが鳴ったのに、どうせ誤報だろうとじっとしていて逃げ遅れたというのがあります。
誤報がおこる非常ベルも問題ですが、警報が鳴ったら取り急ぎ状況を確認するのは、当然のことです。しかし、火災が起きて欲しくないという感情も相まって、きっと誤報だろうと思い込みます。自らの命に係わることであっても、人はバイアスの呪縛から逃れられません。
喫煙者の言い訳で最も多いのが、「祖父は1日3箱のタバコを吸っていたが、90歳まで元気だった」あるいは「伯母はタバコを吸わないのに70歳のときに肺の病気で亡くなった」というものです。「少数の法則」とも言われるもので、少数の事例で事実を過大評価しています。
日本総研が、都道府県別の幸福度を評価すると北陸三県(福井・石川・富山)がトップ3になり、沖縄県が最下位だそうです。インフラの整備とか、治安がいいとか子育てがしやすいとかで総合的に判断しています。
しかし、日本人の多くは沖縄県に住む方が幸福だと感じます。老後に移住したい場所の1位は沖縄県ですし、実際に移住する人もたくさんいます。青い空・青い海・降り注ぐ太陽といったポジティブなイメージが、社会インフラの未整備を忘れさせます。
経営においては、意思決定にはバイアスが潜む余地があると認識して、回避に努めることが大切です。しかし、一方で「経営は人なり」ですから、バイアスを認めたうえで、判断するのも必要です。なかなか難しいところです。