萩焼を購入した県外のお客さまからクレームがくることがままあるそうです。
山口県の人は知っていますが、萩焼の器は水が漏れます。そして、この水が漏れることが萩焼の最大の特徴です。どうぞ、クレームの電話をするのは思いなおしてください。
簡単に言えば、萩焼では陶土に目が粗いものを使います。焼き締りがなくて、スカスカの空洞ができるようなものです。そのおかげで、ふんわりとした独特の風情が楽しめます。
また萩焼の釉薬では、枇杷釉と白萩釉(「休雪白」とも)の二つが主流です。いずれの釉薬でも出来上がりでは細かいひびが入ってきます。この結果、萩焼の器は吸水性が高くて漏れやすいのです。上方落語に「はてなの茶碗」という有名な噺がありますが、千両の価値がある漏れる茶碗です。萩焼というわけではないのでしょうが?
さらに、萩焼の特徴は、脆くて割れやすいことや、現代風では電子レンジでの使用に向いていないことなどです。これらは欠点ではありますが、その代わりに萩焼に独特の風情を出します。
茶道の世界では、「一楽二萩三唐津」と言われて、萩の茶碗は大変高く評価されています。
ふんわりと保温性のよい萩焼の茶碗で飲むお茶は特に美味しいそうです。また、表面のヒビからしみ込んだ茶が新たな風合いを醸し出して、「萩の七化け」と言われる変化をつくります。萩焼は使っていくことで完成していく不思議な道具です。
そうは言っても、漏れる・脆い器というのは日常使いには適当ではありません。現代の萩焼のなかには、日常の使用に耐える程度に工夫をしたものも増えています。
皆さま、どうぞ萩にお越しください。
昨年は大河ドラマ「花燃ゆ」の効果で、萩の観光地はどこも大入り満員でした。今年はそこそこになってきていますので、萩焼体験なども十分に楽しめるそうです。
うまく作れば雰囲気を出して漏れる器が出来上がるかも知れません。
最後になりましたが、萩焼の器はずっと漏れるのではなくて、使っているうちにヒビに入り込んだ茶渋などが漏れを止めてくれます。安心してください。