長年に渡って研究されて期待され続けながら実現になかなか近づかない技術です。
石炭火力発電は太古の昔に地上にあった二酸化炭素を植物が回収して地中に貯えていたものを、現代に再び地上に放出しているわけです。
但し、長い期間をかけて貯えたものを、短い時間で掃き出しているので、地球温暖化という問題を生じています。
そこで、その二酸化炭素を回収して再び地中に貯留すればよいではないかというのがCCSという技術です。1990年頃から温室効果ガス排出抑制の切り札と言われ続けています。
資源量が多く比較的採掘が容易(但し、二酸化炭素を大量に放出する)石炭を、電力用燃料として使い続けることができるからです。
現在でも、世界中で多くの実験や実証プロジェクトが動いています。しかし、どうも決め手に欠けています。できない理由はいろいろあるのですが、最大の課題は技術革新が完成していないことです。
現在のところ、CCSをおこなうには非常に大きなコストがかかります。このコストの多くは、二酸化炭素を貯留するために大きなエネルギーを必要とすることから生じます。
二酸化炭素を回収するプロセスは確立されていて、費用も許容できる範囲です。しかし、二酸化炭素を深地下であれ深海であれ、貯留するために臨界状態まで圧縮するエネルギーは膨大です。そのために、別の石炭火力発電所が必要だというブラックジョークもあります。
この問題の解決策は2つあります。
1つは、地球規模で環境税を掛けて、二酸化炭素の放出に値段をつけることです。二酸化炭素を放出することで高額な支払いが発生するなら、お金を掛けてでも排出を止めようとするでしょう。しかし、あまりスマートな方法ではありません。
もう1つは、回収した二酸化炭素を工業用原料として再利用することです。日本にも石炭化学の長い歴史があります。例えば、回収した二酸化炭素からプラスチックが生産されるということです。また、二酸化炭素から新たな燃料をつくることも考えられます。但し、マテリアルバランスが取れるかどうかは難しい課題です。
いずれにしても、まだ少し時間がかかりそうですね。