井原西鶴・日本永代蔵の連載の最後の三分の一のおさらいをします。
日本永代蔵は、今で言えば「経済短編小説集」です。全部で30の物語が描かれています。これまで10偏毎におさらいをしていましたので、最後の21~30編の解説をします。
日本永代蔵が刊行されたのは 貞享5年(1688年)1月のことです。今から330年前で、江戸時代中期の物語です。戦国の騒乱が終わり、江戸時代の日本では、現在と同じように自由な経済活動がおこなわれていました。
作者の井原西鶴は、裕福な町人の子として生まれますが、商売の道には進みませんでした。最初は俳諧師として身を立てますが、松尾芭蕉が新たな俳句の世界をつくったのをみて、草紙作者(今風に言えば、大衆小説の作家)に転身します。
日本永代蔵は日本で最初の経済小説ですが、読んでわかるように、西鶴は金儲けを必ずしも肯定していません。かと言って、否定もしないのです。商人・ビジネスマンは、利益を上げることが目的であることは当然です。但し、利益の本には自ずと倫理があり、企業の永続が必要だと理解しています。
それでは、21編~30編までの10編の主題をおさらいしておきます。
21.廻り遠きは時計細工
商売に成功するには、先ず自己資本があること、次に商品を独自に工夫すること、三つ目は正確な記帳と正直な取引をすること、四つ目は安いときに仕入れて高くなったら売ること、最後にリスクのあるビジネスには手を出さないこと。
【330年前でもビジネスの成功のコツは変わりません!!】
22. 世渡りには淀鯉(よどこい)の働き
営業マンの仕事は売上を立てることではなく代金の回収です。購買マンの仕事は値引きさせるだけでなく支払いサイトの延長が大切です。これには、顧客や購買先とあまり親密にならず、ほどよい距離感を持った関係を守ることが大切です。
【黒字倒産なんて憂き目に遇わないためには、この二つをしっかり心得ることです!!】
23.大豆一粒(まめひとつぶ)の光り堂
円滑な事業承継を成功に終わらせるのは難しいものです。どれほど綿密に準備をして計画的に実行しても、経営者の親子間だけでの承継はリスクがあります。後継者を独りにしないで、経営幹部・古参従業員、有力取引先などとの協力関係をつくることです。
【親の事業を継承するのは骨が折れます。協力者や支援者を確保することが大切です。】
24.朝の塩籠(しおかご) 夕べの油桶(あぶらおけ)
ビジネスに自分の趣味を持ち込むと失敗しやすい。あまりに器用な人も成功しないことが多い。ビジネスで成功するのは、結局のところ、収支をきちんと計り、細部にこだわり、誤りをおこさず、丁寧に正直に一生懸命に働く者です。
【ビジネスには、丁寧に正直に一生懸命に取り組む!!】
25.三匁五分曙のかね
経営者にもしつけが(躾)が必要です。しつけというのは、厳しすぎるということはありません。厳しくしつけた先代が亡くなった後に、妻や経営幹部が経営者を甘やかして、迂闊なことを続ければ、すぐに会社は傾いていき、倒れるのに時間はかかりません。
【経営者は、身近で自らを厳しくしつけてくれる人をたいせつにすること!!】
26.銀(かね)の生る木は門口(かどぐち)の柊(ひいらぎ)
ビジネスの成功は、わずかな利益を数多く積み重ねて達成されます。わずかのムダを排除し続けた結果です。長年苦労して積んだ利益でも、油断すると失うのは簡単です。「朝夕の算盤を油断することなかれ!」というのは、真理です。
【会社の利益や信用を失うのは簡単です。油断禁物!!】
27.見立てて養子が利発
事業承継とは難しいものです。息子が立派な経営者の素質を持っているとは限りません。会社を永く発展させるには経営者の資質は重要です。そんなときは、冷静沈着に判断して親族以外の後継者を選ぶことを逡巡してはなりません。
【一代だけの会社はたいしたことがない。会社は持続的に発展させること!!】
28.買置きは世の心やすい時
成功する経営者は太っ腹なものです。太っ腹と言っても、金銀財宝を言い値で買い漁ったり、飲む打つ買うに散財してはなりません。生きた金を堂々と思い切って使って、社会に貢献してこそ会社は繁盛していきます。
【社会貢献には太っ腹で臨む!!】
29.身代固まる淀川の漆
倒産する会社は引きも切らず、傾く原因には数多くあります。そもそも起業の段階でインチキな会社もありますし、力量を超えた事業に手を出して立ち行かなくなった会社もあります。逆に、枝葉末節にこだわり過ぎてチャンスを失い続けるのも残念です。
【欲しいものを買わず・惜しいものを売れ!!】
30.智恵を量る八十八の升掻(ますかき)
ビジネスで成功するには、大きな夢を持ち、どっしりとした心と、よい部下を持つことに心掛けましょう。会社が繁栄して、夫婦が仲良く健康で、跡継ぎが立派に成長しているのが理想です。日本の美しい四季は巡り続けるように、会社が発展を続けることが望みです。
【企業が生々発展することで、日本はよく治まります!!】
~了~