生産加工の品質は、いい機械を使えば良くなり、それなりの機械だとそれなりだ。つまり、工作機械の良し悪しだけで決まる、と言う人がいます。
もちろん、そんなことは無いのですが、そう言わせてしまっていることを、製造系の人は反省しなければなりません。
自分がつくった製品を、自信を持って堂々とアピールすることも、ときには必要です。
例えば、マシニングセンタなどでの切削加工では、工作機械の進歩は想像を絶しています。この分野は、世界に日本が誇るナンバーワンの産業です。世界でのシェアは工作機械全体では15%ほどですが、ハイエンドなものでは日本とドイツが世界を席巻しています。
多機能で高度な数値制御をおこなううえに、工具の交換やパレットの交換まで自動でおこない、省力化も極限まで進んでいます。
それでも、工作物と工具のたわみから切断抵抗を予測して、材質や切削油の条件などから切削温度を割り出し、適切な条件設定をすることは大切です。また、切削工具は摩耗しますから、材質や切削条件に応じた微調整も必要です。加工面に傷をつける恐れがある切り屑の除去なども、切削油剤の選定などにセンスが必要な仕事です。
最終的な加工精度や面粗度を決めるのは、やはり職人の腕と経験に頼ることになります。
日本の生産加工が優れているのは、工作機械が優れていること、職人の技能が優れていることに加えて、工具に使われる素材をつくる技術があることや、切削や潤滑に使われる油剤の開発に努めていることなどもあります。
出来上がった一つの製品の後には、多くの企業や人々の叡智が隠れています。