最近の裁判の判決は、ちょっと首をひねるようなものが増えてきています。
NHKニュースより・・
定年後に嘱託社員として再雇用されたトラックの運転手が、待遇が不当だと訴えた裁判で、東京地方裁判所は「正社員と同一の仕事なのに賃金に差があるのは違法だ」として、会社に対して正社員と同じ賃金の支払いを命じる判決を言い渡しました。
このブログでは、「同一労働同一賃金」という考え方は、少なくとも正社員(正規労働者)にはそぐわないということを何度か書いてきました。
分かりやすい例で言えば、
例えば、部品Aを部品Bに取り付ける仕事は1日1万円と決めます。同一労働だから同一賃金というわけです。
ベテランで部品Aを部品CやDにでも取り付けることができる人と、新入社員でその仕事しか出来ない人が同じ賃金というのは変ですよね。今月、新入社員が部品Aを部品Bに取り付けているのは、先月ベテラン社員が手取り足取りで教えたとしても同一賃金なのでしょうか?
また、同一労働同一賃金の悲劇は建設業では顕著です。公共工事の労務単価は職種で一律に決まります。ベテランの大工も素人に近い大工も同じ値段です。釘一本打つのでも、熟練者と未熟なものでは、建物の出来映えに天地ほどの差が出るのは想像に難くありません。
巨大なマンションを建てるときに、鉄筋工一人1日2万円×人数が同一ならば同じ品質ではありません。同一費用同一品質ではないのです。
公共工事で同一労働(職種)同一賃金が徹底された結果は、熟練工はバカバカしくなって仕事を離れていきました。建設業界の人手不足の原因は、少子高齢化とか3K職場を嫌うとかだけが原因ではありません。一人で素人3人分の仕事をより高い品質でこなせる職人が、いなくなったのです。
さて、冒頭の判決から二つのことを感じます。
一つは、最近の地方裁判所の判決がちょっとおかしくなっているのではないか?ということ。裁判官は独立して判決を出すのでしょうから、裁判官が浮世離れしてきているようです。
もう一つは、与野党ともに同一労働同一賃金と言いだしていることです。
ちょっと考えればわかると思いますが、同一労働同一賃金という風潮は、労働者が受け取る賃金が増えるよりも、経営者が支払う賃金を下げることにつながります。
長い期間の雇用によって育成していた熟練者・職人の匠の技を失っていくことになると心配です。