36年ぶりの共産党大会~北朝鮮~

日本と世界の多くの目が平壌に向かっている今日この頃です。

演出がうまいなぁ~と思います。

 

日本の主要紙の社説の見出し・・

朝日新聞 

「北朝鮮党大会 国政の衰えを直視せよ」

毎日新聞 

「北朝鮮の党大会 個人崇拝では道開けぬ」

日経新聞 

「独裁体制強める北朝鮮を憂う」

読売新聞 

「北朝鮮党大会 核に固執しては未来は開けない」

産経新聞 

「核保有国宣言 強硬路線に展望などない」 

 

 

皆さん、どう思いますか? どれも、ちょっとピント外れのように思います。

ワイドショーのコメンテーターなんかにも、金正恩体制の脆弱さとか危険な暴走とか、少し揶揄するような論調が多いように思います。党大会の欠点や瑕疵を見つけては、ちょっと馬鹿にしていますが、北朝鮮をコントロールできない苛立ちの裏返しのように思います。

北朝鮮側から言えば、衰えてもいないし、個人崇拝でも独裁でもないし、核や強硬路線にも走っていないのに・・というところでしょう。

 

今回の北朝鮮党大会の進行を見ると、とても演出がうまいなぁ~と感じます。

海外政府からの来賓は全く呼ばないで、民間の報道関係者だけを平壌に集めました。そのうえで、せっかく集めた報道陣に党大会は直接取材を極端に制限(一部の人に10分間?)したうえで、都合のよい場所の取材だけをさせて映像を撮らせます。世界各国では、自国の取材陣が撮影した映像に、北朝鮮メディアが流す党大会の映像がミックスされて流されます。

 

圧巻はイギリスBBC記者の拘束と国外退去処分でした。説明する当局者(英語は話さない)はキャラは一流ですし、BBCの同僚の恫喝を右から左に受け流す北朝鮮の通訳の態度も秀逸です。三谷幸喜クラスの演出家がつくるコメディーのようでした。

 

さて、社説やワイドショーの論調は無視して今回のニュース映像や記事から冷静に判断すると、北朝鮮の金正恩体制は国民の支持をある程度受けているようです。平壌市は展示場と言われますが、明らかに建設技術は進歩していて、限られた範囲かも知れませんが経済発展を遂げています。こういった点は、素直に観たほうががよさそうです。

 

金正恩政権が進める政策の中心が、新聞社説にある「核」(軍事)ではなく「経済成長」であることも確かです。北朝鮮の「軍事力(核)と経済の並進路線」というスローガンは朝鮮戦争終結後一貫して変わっていません。この並進が両立しない(核開発は経済的孤立を招く)という解説はあまり正しくなさそうです。

 

この党大会で、金正恩体制はスローガンは変えないままですが「経済重視」を明確にしたと思います。(金正日体制は「軍事力重視」でしたから、表向きを変えないで軸足を移した。)

国内に「国民の生活水準の向上」を約束して、経済の改革開放を進めていきそうです。

 

金正恩体制は2011年末に父である金正日の死から始まり4年余りになります。(権力掌握からなら実質は3年くらいです) 

2012年後半から今回の党大会をゴールにしたプロジェクトが進行したようですが、結果的にうまくマネージメントされていたようです。好き嫌いは別にして評価するべきかも知れません。気になるのは、このプロマネがいったい誰なのか?ということです。どんな経歴のどんなスキルを持った人材が北朝鮮(あるいは国外かも?)にいるのでしょうか?

 

さて、とても変な言い方なのですが、現時点で日本を含む世界各国が北朝鮮に強い経済制裁を安心してできています。これは、北朝鮮の農村に生まれた子どもたちの栄養状態が悪化しているとか、農民に餓死者が出るとかいう事態がおきていないからです。明らかに農林水産の生産性は向上しているようですし、貿易による外貨の獲得もできているようです。

いずれにせよ、謎の多い不思議な国:北朝鮮は日本の隣国であり、目が離せません。