世界で最初の成文憲法~十七条の憲法~

今日は憲法記念日。世界で最初の成文憲法は、聖徳太子によって制定された十七条憲法です。

 

実際に憲法とは何か?というのは難しい問題のようです。辞書によると・・

「国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める基礎法。」

「他の法律や命令で変更することのできない国の最高法規。」

「近代諸国では多く成文法の形をとる。」 とあります。

 

この定義に基づく世界最初の憲法は、推古天皇の摂政だった聖徳太子によって604年に制定された十七条憲法です。

 

これ以前にも、紀元前16世紀のハムラビ法典や紀元前2世紀のマヌ法典など法典は数多くつくられていますが、国家の根本原則を定めたりはしていません。西洋では、十七条憲法から600年余り経過した1215年にマグナカルタ(大憲章)が最初の成文憲法です。

尚、十七条憲法は現在では効力を失っているので、現存する最古の憲法はアメリカ合衆国憲法になります。


十七条憲法を概観すると・・

1条 ”以和為貴(和を以って貴しと為す)”からはじまります。

☞ 協調を貴び力による争いはしない。何事も真摯な議論によって決定する。

2条 ”篤敬三宝(篤く三宝を敬う)”からはじまる。

☞ この国は仏教の教えに依拠して運営される。

3条 ”承詔必謹(詔を承けては必ず謹め)”からはじまる。

☞ 臣下は天皇の命令を受けたら謹んで従うこと。

4条 ”以礼為本(礼を以って本と為す)”からはじまる。

☞ 政府高官・官僚・役人(以下、官吏)は礼(ルール)を守って仕事をすること。

5条 ”絶餮棄欲(むさぼりを絶ち、欲を棄てる)”からはじまる。

☞ 官吏は饗応を受けてはならない。官吏は欲を捨てなければならない。

6条 ”懲悪勧善(悪を懲しめ、善を勧める)”からはじまる。

☞ 官吏は、悪行を取り締まり懲らしめること。善行は見つけ出して賞賛すること。

7条 ”人各有任(人おのおの任有り)”からはじまる。

☞ 官吏にはそれぞれの任務があるので忠実に職務にあたること。

8条 ”早朝晏退(早くまいりて、遅く退け)”からはじまる。

☞ 官吏は朝早くに出仕して、夜は遅くに退出すること。

9条 ”信是義本(信はこれ義の本なり)”からはじまる。

☞ 官吏はいつも真心をもって職務を遂行しなければならない。

10条 ”絶忿棄瞋(忿を絶ち、瞋を棄てよ)”からはじまる。

☞ 官吏は、怒って粗暴な行いをしたり、自己中心的に腹を立てることをしてはならない。

11条 ”明察功過 罰賞必當(功過を明らかに察し、賞罰を必ず当てよ)”からはじまる。

☞ 官吏の功績と過失は、明らかにされて、それに見合う賞罰が適正におこなわれる。

12条 ”国司国造 勿斂百姓(国司国造、百姓おさめることなかれ)”からはじまる。

☞ 地方官は勝手に住民から税を徴収してはならない。徴税権は国にだけある。

13条 ”諸任官者 同知職掌(もろもろ官に任ずるもの 同じく職掌を知れ)”からはじまる。

☞ 官吏は官職に任じられた時点で、前任者と同レベルで職務を熟知していること。

14条 ”無有嫉妬(嫉妬することなかれ)”からはじまる。

☞ 官吏は他人の能力に嫉妬してはならない。優れた者は登用され、優れた国をつくる。

15条 ”背私向公(私にそむきて、おおやけに向かう)”からはじまる。

☞ 官吏はいっさいの私心を棄てて、公務に向かわなければならない。

16条 ”使民以時(民を使うは時を以ってする)”からはじまる。

☞ 当時の徴税は使役(勤労)で、大半の国民は農民です。使役は農閑期に限ること。

17条 ”夫事不可独断(それ事は、独りでさだむべからず)”からはじまります。

☞ 高官と言えども、ひとりで判断してはならず、必ず合議をおこなって誤りのない決定をすること。

 

1条は、誰もご存知の「和を以て貴しとなす」です。

2条は、仏教の教えにしたがうことを定めていて、1条と合わせて憲法前文のようなものです。

3条では、「臣下」は天皇の命令に従わなければならないとあります。概念としては国民全体に対して”国体(天皇を中心とした秩序)”を定義しています。

4条以下では、「群卿百寮」に対する基本ルールを言っています。高官から地方官まですべての朝廷に仕える官僚が対象です。この時代に官僚を務めるのは、たいへんです。

 

十七条憲法は、シンプルだけど、素晴らしい憲法です。第1条で「平和主義」を定めてはじまり、第17条で「民主主義」 を定めて締めくくっています。