近江商人の「三方よし」とは「売り手よし、買い手よし、世間よし」です。
売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということです。
今の滋賀県(近江)出身の商人の心得をいった言葉です。
・・ちなみに、近江(おうみ)は、”淡水(あわうみ)”が語源で、琵琶湖のことです。
対になる、遠江(とおとうみ)は、今の静岡県西部ですが、浜名湖のことです。遠近は、京都が起点です。
近江地方は京都と伊勢、関東、北陸を結ぶ交通の要地です。また、当時は日本有数の穀倉地帯であり、麻布・蚊帳・畳表などの生産も盛んでした。
近江商人は、全国各地に商品を担いで行商に出掛けます。
その地で、売れる目処が立てば腰を落ち着けて資金を貯めます。近江の商品だけでなく、その地域の特産品の取り扱いを増やしていきます。ある程度のお金が貯まったら、その地に店を開きます。次には、その店を拠点にして行商に出掛けて、新たな店を開きます。
これを繰り返して、面的な店舗網(ネットワーク)をつくります。
店舗網のなかを各地の産物が流通していくので「産物廻し」と言われた手法です。全国各地に店舗をつくり、鎖国の禁を破ってベトナムにまで渡って巨利を得ていた者もいます。
この背景を知ると、近江商人の「三方よし」も少し見方が変わります。近江商人は、進出先の産物を取り扱うのです。
「売り手よし」「買い手よし」は、どちらも近江商人にも当てはまります。
「世間よし」とは、出店先の地域との共存共栄をはかるために、どうしても欠かせません。
「世間」とは、社会全体のことではなく、進出した比較的狭い地域のことを言っていたようです。
つまり、「三方よし」は、結構したたかな経営戦略とも言えます。
近江商人の活動は、鎌倉時代から江戸時代に掛けて全国で展開されました。
現在の企業はビジネスを全世界で展開しています。また、世界そのものが多重にネットワークでつながり連携しています。地球環境問題など、世界中の人々が同時期に影響を受ける課題もあります。
自らの企業にとっての「世間」を、どう定義するのかを考えてみることは大切です。