ある時期、ISO9001・ISO14001の認証無くては仕事ができない時代がありました。
ISO9001は品質マネジメントの国際規格ですが、認証件数は2006年をピーク(約44000件)にして、年々減少しています。今では1万件くらい減って、約34000件と言われています。
ISO14001(環境マネジメントシステム)のほうは、2009年に約21000件でピークを迎えて、現在は約19000件と、10%くらい減っています。
何故人気だった二つの規格で認証数が減ったのかというと、大きくは二つの理由があります。
一つは、認証をとって維持するにはかなり大きな費用がかかるのですが、それに見合った効果(会社であれば収益)が見込めないという経済的な判断です。
例えば、ISO認証が取引の条件であったり、入札の加点要素だったりしたのですが、そういうことは減ってきました。また、取引条件のために嫌々ながら認証をとったような会社では、ISOの本来の目的である経営改善効果が薄かったことも要因です。
もう一つは、ISO9001・ISO14001以外にも会社が取得したり遵守しなければならない規格や要求事項がどんどん増えたことです。
認証件数の多いほうから、ISMS(情報マネジメントシステム)が約5000件、OHSMS(労働安全衛生マネジメントシステム)が約2000件、FSMS(食品安全マネジメントシステム)とFSSC(食品安全システム)がそれぞれ約1500件などです。
また、ISO9001のファミリー規格も増えています。
有名なところでは、ISO13485のMDMS(医療機器品質マネジメントシステム)が1000件を超えていて、ISO9100のASMS(航空宇宙品質マネジメントシステム)は難関ですがすでに約600件の認証が認められています。
このほか、企業や組織の社会的責任規格であるISO26000もあり、公開会社などでは内部統制の仕組みが必要です。従来の方針管理制度があり、組織や要員に対してはMBOと呼ばれる業績目標管理などもあります。
大会社では、それぞれのシステムの担当部門が専門化しているケースも多く、何と何がどのように連動してるのか分かりにくくなっています。
ISO9001とISO14001が特に優れた規格でもないでしょうが、古くからあってシステムとしてこなれていることは確かです。
企業の活動にPDCA管理を習慣つけるという観点では、まだまだ使えます。
この両規格をうまく活用することで、売上アップ・コスト削減を達成し、よい品を提供して顧客満足度を高めることができます。経営者や管理者は、ISOを担当部門だけに任せないで、経営改善につなげる方法を模索してください。
【2017/5/12 追加】
ISO(国際標準化機構)のデータから、2015年までの日本と中国の認証件数の推移をグラフにしました。上の記事では、JAB(日本適合性認証協会)の認証件数を日本のISO認証件数としていたために件数が異なります。日本では、いわゆる”ノンJAB”と言われる海外機関認証のISOが増えているようです。安価で簡単にISO認証を入手できる(但し、現実的で効果的な審査はおこなわれないことが多い)ことから、広まっているようです。