2014年6月1日から大気汚染防止法が石綿関係で改正されています。
石綿(アスベスト)は、天然のけい酸塩鉱物です。とても細い繊維状をしています。主に、建物の保温断熱の目的で、昭和30年頃から大量に輸入されて使われました。
その後、石綿の繊維が、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因となり、肺がんを起こす可能性があることがわかりました。石綿による健康被害の特徴は、石綿を扱ってから長い年月を経て出てくることです。例えば、中皮腫の潜伏期間は平均35年と言われます。
石綿は、耐熱性や電気絶縁性などに優れて、安価なために、スレート材・ブレーキ材・防音材・断熱材・保温材などで使用されました。建物への石綿の吹きつけは昭和50年に禁止され、現在では製造も輸入も原則禁止されています。
石綿は、身近な建材などに使用されていても、そこにあること自体は問題ありません。身体に吸い込むことが問題です。
現在において、石綿で注意するべきは石綿含有材を使用している建物の解体工事等での飛散です。耐火建物の壁や天井への吹き付け材・ビルの機械室やボイラー室の吸音用の吹き付け材が最も飛散しやすい”レベル1”です。配管やボイラー本体の保温材・屋根や煙突の断熱材などが次に飛散しやすい”レベル2”です。この2つは、きちんと管理しなければなりません。
簡単に言えば、昭和30年(1955年)から昭和50年(1975年)の間に建てられた建物では、石綿吹き付けがおこなわれているケースが多くて、解体工事をする場合は最大の注意が必要です。
昭和50年以降の建物でも、石綿を含む建材が使用されているケースがあるので注意します。
平成25年(2013年)に石綿を使用していた建物の解体工事は55,000件でした。上記の期間に建てられた建物の解体工事は今後増えてきて、平成40年(2028年)にピークを迎えて年間10万件になると予想されています。その後は減っていきます。
さて、大気汚染防止法の主な改正点は次の二つです。
一つは、解体工事等の際の届出の義務を負うのが、”施工者”から”発注者”に変わったことです。
届出の責任が工事業者にある場合、発注する側から「安くしないと発注しない」とか「石綿のことなんかどうでもいい」と言われると、業者の側は「分析費用も出してもらえないなら黙っておこう」ということになりかねません。
改正法では、工事に着手する14日前までに、発注者が届出の義務を負うことになりました。また、費用負担を拒む・作業基準の違反を強要する、といった行為は禁止され罰則の対象になります。
もう一つは、解体工事等をおこなう際には”事前調査”が義務化されたことです。
全ての解体工事では、元請の工事業者が法律の手順にしたがって事前調査をおこなわなければなりません。また、この調査結果は解体工事の現場に掲示が義務付けられました。
石綿を使った多くの建物が、耐用年数が来て解体される時期になっています。
ご注意ください。