日曜連載は、井原西鶴の「日本永代蔵:現代版アレンジ」です。第四回。
江戸に隠れなき出見世 一寸四方も商売の種
(東京で誰でも知っている支店※3㎝四方の布でも商売の種)※当時の呉服屋は京都が本店。
バブル時代の全盛期、誰もかれも裕福になって、浮かれ上がっていた。あっという間に株価は数倍になり、サラリーマンでも土地やゴルフ会員権の取引で月に何百万円も儲かった。
“華やかな“というより、ど派手な服装が大流行。
サラリーマンはイタリア生地のオーダースーツ、OLさんはミンクの毛皮で通勤。ローンの審査はユルユルで、億ションを買って、ダイヤで飾り、クルマはベンツ。
男はコンパニオン付きの温泉ツアー、女は毎夜クラブで踊り狂い、花見だ・月見だ・クリスマス・・だと、イベント三昧。
これはチャンスと見極めて、世界中から東京銀座の一等地に高級ブティックがどんどん進出。
メタルにガラスに大理石、豪華絢爛な店構え。
社長も部長も新入社員も、公務員も商店主も、もっと好いモノ、高いモノを探しに来る。
仕入れた商品は、値段を高く付けた商品から順番に飛ぶように売れていく。みんな、ゴールドのクレジットカード払いだ。
もちろん、こんなことが長続きするはずもない。少しずつ、売れ行きは落ちてくるのだが、相変わらず新しく開店する店は多い。
高ければ高いほど売れたのは夢だったのか、値段を下げなければ売れなくなった。そのうえ、クレジットカードが残高不足で回収できない事故まで起こり始めた。
もう店をたたみたいところだが、土地の値段も暴落して、今やめれば借金だけが残る。撤退なんかできるはずもなく、規模を小さくして続けるしかなさそうだ。
ところが、こんなときでも、儲かり続けている店がある。
「クロウ」という店も銀座の一等地にある結構な大型店だが、間口は15mほどしかなくて奥行は100m以上もある。金ピかのブランド店の隙間にひっそりと佇む感じの店だ。
この店では、優秀な従業員を40人ほど雇っていて、一人ひとりが違う担当を持っている。
例えば、スーツだったらイタリア製・英国製・米国製でそれぞれ担当がある。靴も、カバンも・・それぞれ専門の担当者がいる。そのうえ、少数のブランドに絞り込んでいて、それ以外の商品は扱わない。店のバックヤードには、自前の職人を抱えて、急な注文があっても直ぐに納品できる体制をつくっている。何より全ての商品は現金掛け値なしの販売で、クレジットカードさえ使えない。
バブル崩壊後も、この店だけは過当競争に苦しむこともなく、繁盛を続けている。