今週金曜日に「日本食品産業もったいない大賞」の授賞式があります。
廃棄カツの横流しをした処分業者が受賞するなんてことは、当然ながらありません。健康被害が出る危険を無視して、食の安全を脅かす行為は全体に許されません。食品は人の健康やときには生命に関わるのですから、正直に細心に消費者に届けられなければなりません。
さて、今年の「もったいない大賞(農林水産大臣賞)」は、三井化学東セロ株式会社が受賞します。「鮮度保持フィルムの製造販売による食品ロスの削減」というのが、受賞理由です。
皆さんも(特に女性の方は)野菜や果物の鮮度保持フィルムの効能については、いくらかご存知かと思いますが、少し説明します。
先ず、野菜や果物は収穫された後でも呼吸をしています。呼吸というのは、簡単に言えば、酸素を取り入れて有機物を酸化して、炭酸ガス(と水)を放出する反応です。
つまり呼吸によって、有機物(糖分など)と水分が失われるので、萎れてきます。つまり鮮度が落ちていきます。腐敗したり、カビが発生したりします。
これを防ぐ方法の一つが「低温」にすること、もう一つが「低酸素濃度・高炭酸ガス濃度」の状態で保管することです。つまり、野菜や果物にあまり呼吸をさせないということです。
ここで難しいのは、野菜や果物を完全に密閉したフィルムで包装(つまり窒息して呼吸できない)すると、「無酸素」状態になります。こうなると嫌気性菌による腐敗が起こってしまします。あくまで「低酸素」でなければいけません。
これを包装のなかでおこなえるようにしたのが「鮮度保持フィルム」です。
この分野では、住友ベークライトのP-プラスⓇが先行していて有名です。フィルムにレーザー加工で微細な穴を開けて、酸素を少し通過させることで、包装のなかを「低酸素・高炭酸ガス濃度」に保ちます。
類似の方法としては、フィルムはガス遮断するものを使って、シール部分を熱圧着する際に微細な穴を開ける方法などがあります。
今回受賞の三井化学東セロのスパッシュは、低密度ポリプロピレン(PP)フィルムを使用して酸素透過性を持たせる仕組みです。
この鮮度保持フィルムの技術では、日本は大きく先行しています。野菜や果物を新たなエネルギーを使わないで長持ちさせます。こういう技術こそが「もったいない」を達成させます。