デパートの中にある市役所

栃木市役所は東武デパートの中にあります。えっ? 

 

栃木市は「小江戸」と呼ばれ「蔵の街」として有名です。

栃木駅から新栃木駅に向かうエリアには、多くの蔵が残っていて、とても情緒があります。蔵といっても、倉庫に使われる土蔵がたくさんあるだけではありません。店蔵(見世蔵)と呼ばれる、店舗併設の土蔵や石蔵が多数あって、バラエティーに富んでいます。東京都心から1時間の位置でもあり、観光資源としてうらやましい限りです。

 

さて、蔵がたくさんあるということは、栃木市にはお金や高額な物資が集まっていたということです。江戸時代の栃木市は日本有数の商都でした。

1617年に、徳川家康が久能山東照宮から日光東照宮に改葬されました。その後、朝廷から例幣使と呼ばれる勅使が毎年、江戸から日光まで参向するようになりました。このルートが例幣使街道で、栃木市はその宿場として開かれ栄えました。

 

加えて、栃木市を流れる巴波川の舟運がありました。巴波川は江戸川につながり、栃木市が江戸と日光の間の交易の拠点となりました。多くの豪商が誕生して、巴波川沿いに多くの蔵が立ち並ぶようになったそうです。

今も、栃木市には東京都心に不動産や資産を保有している隠れた資産家が多数おられるそうです。

 

さて、その蔵の街に東武百貨店らしき大きな建物がありました。どう見ても外観はデパートなのです。”TOBU"の印象的なロゴもあります。ところが、入り口の”TOBU”のロゴの上に「栃木市役所」と控えめに書かれています。

 

どういうことかと聞いてみたところ、先ず地場の大手デパートが撤退することになったそうです。ちょうど老朽化した市役所の建て替え時期であったので、デパートの建物を購入して市役所を移転することになりました。その際に、費用負担を抑えるためにデパートの2~4階を市役所が使い、1階には東武百貨店に入ってもらうことにしたそうです。これで、栃木市にデパートも残ることになりました。

 

あまり聞いたことのない事例で、いいアイディアだなあと思いました。

ところが、ちょっと批判もあるようです。賑わいやデパートを残すのはよかったのですが、市役所の移転にかかった費用が大き過ぎるということです。

 

特に、東日本震災の後でもあって、市役所の防災拠点としての機能も必要となり、耐震補強などにも費用がかかったそうです。また、やはり市役所としてはいろいろと使いにくいという指摘も多いようです。(実際には見ていないので、詳細は不明ですが・・。)

なかなか、三方よしとはいかないようです。