化血研の不正製造問題 謙虚に取り組むことの大切さ

 データの改ざんの仕方や隠ぺい工作のやり方が、手が込みすぎていました。


 報道の要旨としては、加熱製剤の製造をする工程で、いろいろな理由で製造法の変更が必要になることがある。

 例えば、需要が増えたときに供給量を増やすとか、製造効率を高めるとか、という理由です。

 医薬品の場合は、製造法を変更するときには国の承認を受けなければならないのですが、その承認を受ける間に製造がストップするとか、手続きが手間だとかで、受けずに済ましていました。

 これは、1974年以降40年以上おこなわれていて、このことが発覚しないように書類を改ざんし、古く見せるために紫外線を当てたりしていたそうです。


 どうも、製造法の変更で実際の被害は出ていない模様だそうです。

 恐らく、化血研としては、製造法の変更が品質に影響がないとか、患者さんに被害を与えないだろうという確信があって、実行したものと思います。

 ただ、安全だと言うことを国の審査員に説明することを怠りました。もしかすると、うまく説明することが出来ない事情があったのかも知れません。また、一度ウソをつくと、次もウソをつかなければならなくなったということかも知れません。


 今回の問題は、化血研を糾弾するだけでは済みません。化血研だけが製造している製剤もたくさんあるので、患者のためにはその製造を滞らせることはできません。

 また、40年以上に渡って、立ち入り検査をしていながら不正製造を見逃した国の審査にも大きな穴があります。検査を厳格化して解決する問題ではないので、根本的に審査の理念から見直しが必要です。


 化血研に求められるのは、驕りを捨てて自らの知識は限られているのだと考える謙虚な姿勢です。恐らく、化血研こそが真のエキスパートだと言う自負があったのだろうと想像します。

 しかし、化学的知識が深まり、科学技術が進歩しても、人間の知恵は限られたものです。


 先日、フロンの話を書きましたが、「夢の化学物質」と言われたフロンが20余年を経て「悪魔の化学物質」に変わりました。「夢の油」と言われたPCB、スポーツカーに欠かさなかった四塩化鉛、「夢のエネルギー」である原子力・・、みんな同じです。


 医薬品製造は、人の安全に直結します。謙虚に慎重に仕事に取り組むことが必要でした。化血研の薬に頼らざる得ない人々のことを、大切にして欲しいと思います。