PM2.5 中国からの越境汚染 ナーバスにならないで

中国・北京市はスモッグで前が見えないほどです。PM2.5の値も跳ね上がっています。

 

報道によると、「昨日午後8時のPM2.5濃度が、日本の環境基準値(35μg/㎥)の20倍以上の660μg/㎥。今朝の北京市内は濃いグレーのスモッグで覆われており、500メートル先も見えないほど、視界が悪くなっている。

北京市政府は、警戒レベルが4段階中2番目に深刻なオレンジ色の「厳重警告」をこの冬はじめて発表して、高齢者や呼吸器疾患のある人に対して、外出を控えるよう呼びかけている。

2日は西からの風が強まるため、大気汚染の状態が改善されると予測している。」

 

日本に汚染がやってくることを心配する人も多いようです。

 

中国では冬になると、石炭ボイラーによる地域暖房が行われるので、煤塵が放出されてスモッグが発生します。PM2.5の値も高くなります。

今回のように、660μg/㎥といった数値が出ることはときどきあります。今年の11月には、瀋陽で1155μg/㎥といった数字もでました。1000を超えると、もう外は歩けませんね。

 

では、何故こんなに高い数字が出るのか?

急に寒くなったから石炭を燃やす量が増えたのだとか、習近平主席がパリへ外遊して北京を離れたから工場の稼働を上げたのだとか、そんなことはありません。

工場からの煤塵や自動車からの排気ガスの排出量がそれほど変わったわけはありません。要するに、いつもと同じことをしているのに、PM2.5濃度が高くなっているのです。

 

北京市内でPM2.5濃度が上がった、最も大きな理由は「逆転層」の存在です。

 

簡単に言えば、空気の温度は高度が上がるほど下がっていきます。およそ100m上がると、気温は0.6℃下がります。例えば、富士山頂は3700m×0.6=22℃くらい地上より寒くなります。

ところが、冬場の晴天では「放射冷却」という現象がおこって、地面の温度が空気中より下がることがあります。これを放射性逆転とか接地逆転とか言います。

この現象がおきると、地上の大気は安定して拡散されなくなります。このために、排出された煤塵や排気ガスがいつまでも地上付近に漂って、PM2.5濃度が上がるわけです。

 

確かに、中国で排出された大気汚染物質は越境して大量に日本にやってきています。これは、これで、解決すべき大きな問題です。

しかし、今日の北京のPM2.5濃度が高いから、明日の日本が危険な濃度になるというわけではありません。今は、汚染物質が北京市内に閉じ込められている状況です。

心配することは大切ですし、改善しなければなりませんが、あまり悩まないでください。