国連の特別報告者ブキッキオ氏が離日会見で語り、その後事実上撤回しました。
先ず、国連の特別報告者とあります。
国連のなかにある人権理事会は、自ら決めたテーマについて調査して報告をするために、専門家を任命します。この専門家が「特別報告者」で、国連職員ではなく独立した民間の方です。
今回のブキッキオ氏は、「児童売買、児童買春及び児童ポルノ」というテーマで特別報告者に任命されています。もうすぐ71歳になるオランダ人の女性で、元・欧州評議会の事務次長でした。
ブキッキオ氏は、今年の10月に1週間ほど訪日して、日本各地を視察を行いました。その離日に際しての記者会見で、「日本の女子中高生の13%が援助交際を行っている」と発言したそうです。
その後で、日本外務省の抗議を受け、「数値を裏付けるデータはなく、誤解を招くものだった。今後この数値を使用するつもりはない」とする書簡を日本政府に送り、事実上発言を撤回しました。
本来は、権威のある人が数字を使うときは十分な配慮が必要です。ある意味で、ブキッキオ氏の発言は日本の女子学生に対する人権侵害ですね。
日本の社会に実際に住んでいる私たちからみれば、女子中高生の13%・・という数字が全く出鱈目であることは自明です。しかし、世界のなかには信じる人もいるかも知れませんし、何より悪用する国や人が出てくる恐れはとても高いです。
「数字」とは不思議なものです。
権威があると一般に考えられている機関を経由した「数字」は、あたかも正確さが保証されているように見えてしまいます。今回の発言は、ブキッキオさんという民間人が口にした言葉であって、国連や人権理事会を経由したものではないのですが、何となく同等に感じられます。
これが「数字」が入っていなければ話が違います。
ブキッキオ氏は、「援助交際」を、"enjyo kosai"とそのまま発言したようですが、この用語をどのように理解していたのかが不明です。日本人でも意味が曖昧なスラングをオランダ人の彼女はどのように定義していたのでしょうか?
でも、この曖昧さや脆さを「数字」が全て忘れさせます。
「権威のある数字」があれば、適切な定義があり、適切にデータ収集がされて、適切に吟味された、きちんとした裏付けがある発言と受け取られます。「数字」の魔力です。
ちょっと話は違うのですが、国連だけでなく「権威のもろさ」を感じられる場面ばかり多くなっています。そのような組織に所属する人たちは、正直に「権威を守るのだ」という気概を持たなければなりません。