特に、マンションの杭打ちデータの偽装に関する問題を、うまく収束させて欲しいと願っています。
構造計算をおこなう建築士による耐震偽装問題が発覚したのは2005年のことでした。
非常にセンセーショナルな報道があり、行政の過剰な反応があり、結果として罪のない関係者の自殺など多くの不幸なことがおこりました。偽装は不誠実な行為であり、決して許されない行為です。
一方で、この問題を契機にした2006年の建築基準法の改正は、日本経済に大打撃を与えました。民間住宅の建築が長期間停止し、工場の建設も大幅に遅れました。当時はわたしの仕事にも大きなマイナスがありました。
結果として、建設業界は大幅なリストラを余儀なくされ、多くの失業者が生まれました。製造業も生産のタイミングを失い、国際競争に敗れていきました。日本がリーマンショックの影響を世界で最も強く受けた、一つの大きな要因でした。ときの国土交通相の名前をとって、「冬柴不況」とも言われます。
杭打ちデータの偽装に関しての擁護するわけではありませんが、国土交通省がこの問題をうまく収束させないと、違う意味で大きな被害が出ることを畏れます。
煽動的なマスコミやコメンテーターに加えて、本来は自身に責任があるのに気色ばんで目立とうとする首長や政治家なども出てきました。
そもそも、杭打ちの安全施工は電流値の記録紙だけで行われるものではありません。
巡り合わせですが、石井大臣も冬柴大臣と同じ公明党出身です。弁護士出身の冬柴大臣は、当時のコンプライアンス・ブームも意識されたと思います。一方で、石井大臣は、東大工学部出身の旧建設省官僚から政界入りしました。実務面で現実的な采配を期待したいと思います。
「消費者を守るべき」であることに異論はありませんが、ムードに流されて政策を決めたり、過剰な規制がされないようにして欲しいところです。
石井大臣にとっては、就任早々に難しい課題と思いますが、「現場第一主義」を信条にされる堅実な実務家と聞いています。その手腕に大きな期待をしています。