完全人工光型植物工場では、多くの場合「コート種子」を使います。
コート種子とは、一粒の種の表面を粘土などで被覆造粒したものです。
植物工場では一つの培地に一粒の種を植えることが多く、播種(種蒔き)の手間がかかります。野菜の種は意外に小さいので、ピンセットで一粒づつウレタンやロックウールの培地にセットしていくのは手間が掛かります。また、一つの培地に複数の種を蒔くと間引きが必要になります。
そこで、培地ごとに一粒の種をセットして確実に発芽することが望まれます。
コート種子は、種子一粒づつが大きいので播種が容易で、間引きや補種の頻度が低く、種の痛みも少ないので発芽率や秀品率が高くなります。
植物工場の普及による需要もありますが、ハウス栽培などでもコート種子の需要が増加しています。多くの製造者が参入していて、隠れた成長分野です。
コート種子の製造は、化学工学的にも開発の余地があります。
そもそも一粒の種だけを選んで造粒することが難しいです。また、コート層の厚みは薄ければ強度が不足し、厚ければ発芽率が下がります。コート層には適当な通気性が必要ですし、播種したときの吸水性も重要です。また、大きさ意外にも着色をするなど新たな機能を付加したコート種子もあります。まだまだ研究開発を進めて、独自の発展を期待したいと思います。
粉体加工は日本のお家芸の一つです。
そのなかでも「造粒」技術によって、多くの機能性粒子が造られてきました。私の分野であるトナーや顔料などの色材用途は大きなボリュームがあります。また、磁性材料などの分野で無機材料の造粒は盛んに利用されます。触媒や吸着材でも同様です。
精緻な分野では、医薬品や化粧品の造粒や顆粒化、最近ではマイクロカプセル化などもあります。さらに、造粒技術を広くとらえれば、複合燃料のペレットや人工土壌など環境系の材料もあります。
TPPの合意などで、日本の一次産業の競争力強化が叫ばれています。
造粒技術は一例ですが、日本の化学工学の技術や経験がさらに農林水産業に活用されていくことが望まれます。