岩国基地騒音被害賠償判決(”うるささ指数”と”エルデン”)

 岩国基地の騒音被害で原告654人に総額5億5800万円の賠償金支払いの判決がありました。


 W値(うるささ指数)が75以上の地域の住民に賠償金を支払うことになりました。W値についても簡単に解説しています。また、現在では航空機騒音の評価はW値ではなく、Lden(エルデン)で表すように変わっているという記載もあります。

 

 W値とは、WECPNL(荷重等価継続感覚評価騒音レベル)の頭文字をとったものです。名前は長ったらしいのですが、内容は簡単です。

 航空機騒音は列車騒音などと同じく、一つ一つの騒音が独立した単発騒音です。独立した騒音の大きさと頻度の二つの要因で被害の大きさが決まります。

 先ず、離着陸などで騒音が発生したときの騒音最大値を毎回測定して、1日の平均値をとります。その平均値の騒音が発着回数分発生したとしたと仮定します。そのときに、夕方の騒音発生は3倍・夜の騒音は10倍の重みづけをします。さらに、この騒音は単発で20秒間発生したと仮定します。こうした仮定から求めた値を、W値(うるささ指数)としています。

 日本の環境基準はW値で75以下です。

 

 計算は簡単ですが、ちょっといい加減な感じがしますよね。例えば、大型旅客機も小型飛行機も同じく最大騒音と騒音発生時間20秒と仮定します。戦闘機が編隊飛行する場合なども、最大騒音レベルだけではうまく反映できません。大きな問題になったのは、2002年に成田空港が拡張されて住民からの苦情が増えたのにW値はむしろ下がったという事件です。

 日本でこのW値が環境基準に採用されたのは1973年ですから、40年ほど前です。当時は騒音計の演算機能が十分でなかったのです。


 現在では、演算機能が付加された高性能な騒音計が使用できます。そこで、騒音のエネルギーレベルを直接測定して、等価騒音レベル(L)を求めることにしました。それを朝・夕・夜(den)の重みづけをしたものを"Lden"と言います。尚、 アメリカなどの国では夕方(e)の重み付けをしないので"Ldn"です。

 このため、2013年以降は環境基準がLden62デシベル以下に変わりました。


 計量の基準も技術の進歩で変わります。より人の感覚に近い評価ができるようになっています。