M&Aは売り手側の課題が大きい

 地元の経営を支援する機関の方から、親族以外への事業承継は「受け手(買い手)側に課題がある」という話を何度か聞きました。


 山口県内の企業でも後継者がいないのに、70歳を過ぎた経営者の方が死ぬまで頑張ろうというところがかなりあります。残念ながら、自然人である経営者は必ず死にます。そして、高齢になるほど近いうちに亡くなる可能性が高くなります。冷たいとこをいうようですが、どんな名経営者であっても神様でない以上は避けることはできません。


 親族(多くは子ども)に円満に事業を承継することができれば、最も幸せです。しかし、子どもがいないとか、いても他の仕事についているというケースはたくさんあります。そうすると、親族以外への事業承継を考えるべきなのですが、山口県ではハードルが高いようです。


 最大のハードルは、経営者がその気にならないことです。これまで40年間経営してきたのだから、この後も10年・20年と続けられると思っています。食後に何種類も薬を飲んで、目も霞み、手も震えるようになっていたとしてもです。

 経営を譲ることを、身売りだとか責任放棄だとか、何だか悪いことをするような気になります。自分の事業を手放すことへの抵抗感が強いのです。・・ちょっと前に書いた、”武田信玄”です。


 支援する機関も(これはよいことなのですが)経営者側に寄り添った立場ですから、売り手(出し手)である経営者の背中を押すことができません。そこで、「買い手(受け手)がいない」という話になるのだろうと思います。

 しかし、企業やファンドなど金余りの状況にあって、買い手(受け手)に事欠く状況ではありません。上場企業のM&Aだけでも年間13兆円という規模です。「買い手(受け手)はあります。」


 では、何故「買い手(受け手)がいない」のかと言えば、買い手(受け手)に売り手(出し手)の情報が無いからです。

 上場企業は情報開示制度があって、買い手と売り手の情報量にほとんど差がありません。しかし、中小企業は買い手が売り手の情報を入手することは困難で、情報量に大きな非対称性が存在します。この状況で、「買い手(受け手)がいない」のは当然です。

 情報を提供すれば、必ず買い手は見つかり値段がつきます。買い手がつけた値段をみて、譲渡するかしないかを判断すればよいというわけです。


 事務的あるいは技術的なことはありますが、基本は変わりません。