世界遺産に認定されながら、活用しきれていない事例として石見銀山が取り上げられます。
世界遺産だということで行ってはみたが、”がっかり”したという声が多いとのこと。これから、九州・中国地方は遺産過多?になっていきますので、ちょっと気になります。
石見銀山の観光客数は、世界遺産登録前が年間30万人前後でしたが、登録された翌年の2008年には年間80万人を超えました。翌年からは落ち着いて、現在では年間40~50万人です。
年間10~20万人がコンスタントに増えているので、成功はしていますね。
ただ、年間観光客が40~50万人という数は、白神山地・屋久島・小笠原諸島より少し多いというレベルで「秘境の世界遺産」という位置付けのようです。
確かに、石見銀山にもほのかな秘境感もありますが・・。
自動車を使った場合では広島から2時間余り・山口から3時間余り・出雲大社から1時間余りといった距離関係ですから、それほど不利な立地ではありません。
観光客が大勢来たからいいというわけでもないのですが、せっかくの世界遺産登録なのですから、もう少しの工夫があってもよいかなと思います。特に平均滞在時間が2時間に満たないというのは、ちょっともったいない感じがします。(通過型遺産とも言われます。)
石見銀山に限らないのですが、日本の世界遺産の最大の課題は「判り難さ」です。
銀山と言っても、今となっては銀が採れるわけでも、銀細工があるわけでもありません。街並みと言っても、萩・津和野、出雲・松江と比べて際立って優るところもありません。坑道跡も素人が見ればただのトンネルですし、精錬所跡もたいしたものではありません。
何が、世界遺産としての価値なのかを、きっちり示さないといけません。大切なのは、来訪者の知的好奇心を満たすことだと思います。
世界遺産を見学するには、観る側にも一定の学習が必要です。
しかし、それを事前にしてきなさいというわけにはいきません。その場に来てから、へ~!そうなんだ。なんだ、そうだったのか!という気づきや驚きを与える仕掛けが必要です。そして、記憶に残れば、もう一度訪問して続きを観たいと思います。
今の石見銀山では、「あ~、よく歩いた。」という印象だけが残りかねません。
以下は、ちょっと品がないですが・・
これまでに人類が掘り出した銀の量はおよそ100万㌧だそうです。そのうち4万㌧が日本で産出されています。この量に、ちょっと驚きませんか?
現在の銀価格はとても安くて、1kgで約6万円です。100万㌧は60兆円くらいです。石見銀山の最盛期は江戸時代の初めころで、年産200㌧でした。今の価値なら120億円相当です。
しかし、当時の銀は金よりも高価でした。金は砂金とかでも入手できますが、銀は大規模な鉱山開発が必要だったからです。およそ、金の5倍の値打ちだったという記録が残っています。
現在の金の価格は1kgで約400万円ですから、200㌧×40億円/㌧×5倍=4兆円です。
石見銀山を巡る物語は、海を超えて当時のヨーロッパ社会にまで広がっていますから、現在の価値観では年間4兆円のインパクトがあったヤマと推定できます。