事業をおこなう場合には、こういう理不尽なリスクがつきものなのです。
この問題の発端は、ベルギー人のデザイナーが自分が作った劇場のマークと東京五輪のエンブレムが似ている。このデザインは、これを真似たものだと主張して、ベルギーの裁判所に提訴したことです。
このデザインは、商標や意匠としての登録はされておらず、権利は確立されていません。このため、IOCなどのチェックにも引っかかりませんでした。ベルギー人のデザイナーも権利化する必要がないか、そもそもデザインとして権利化することができないと判断したわけです。
では、何を根拠に訴訟を起こしたかというと、「著作権」の侵害という理由です。確かに、デザインであっても著作物性を認められるケースはあるのですが、このマークに著作物性があるかというと全く疑問です。日本を含めて民主的な国家では認められないだろうと思います。
しかし、結果としてはエンブレムの取り下げということになりました。どんなに正当なことでも、それを争うには負担が発生します。大きな負担を負うよりは、早いうちに負けておくほうが被害が小さいという判断です。
ビジネスのなかで、同じような経験をした方はたくさんいます。周りの人は、後付けでもっともらしいアドバイスをしてくれるのですが、現実的にはこの種の攻撃を回避することは不可能です。法律や行政が守ってくれると期待しても失望で終わることが多いです。専門家と称する人は、話を聞きに来ることもなく、自分勝手に酷いコメントを垂れ流します。
敢えて教訓を言えば、「人生は神によって清算される」のだと信じておくこと。自分がうっかり加害者側にならないこと。の二つです。