意思決定の心理学・入門

認知心理学という学問の3つの主要課題は、推論・意思決定・問題解決です。

 

実は、心理学というものについて直接触れたことも考えたこともなかったのですが、心理カウンセラーの方と知り合いになったので、心理学の本を読み始めました。

 

すると、今まで経営戦略とか営業戦略という切り口で考えていたテーマが、人の心理という観点から研究されていることが判りました。

 

経営の分野で「戦略的意思決定」は最も重要なテーマです。

例えば、二つの投資案件がある場合を考えます。

A案件:80%の確率で、500万円の利益が見込める。

B案件:5%の確率で5000万円の利益が見込める。

 

経営であれば、期待される効用の大きいほうを選びます。

A案件は500万円×80%=400万円で、B案件は5000万円×5%=250万円ですから、A案件を選択するのが合理的です。

 

 

しかし人間の心理に関わる、次のような例を考えます。

 

今、深刻な伝染病が拡がって、10,000人が感染しているとします。

A対策:新薬を開発します。2,000人分しか作れませんが、2,000人は確実に助かります。

B対策:新施設を建設して8,000人を収容します。収容した人の25%は助かりますが、75%は死にます。

 

どちらを選びますか?掛かる費用など他の条件は同じで、必ずどちらかを選びます。

実は、A対策もB対策も、期待効用は同じです。B対策でも 8,000人×25%=2,000人が助かります。経営であれば、どちらの選択肢も同じ価値になります。

しかし、この質問ですと、7割の人がA対策を選び、3割の人がB対策を選んだそうです。

 

この設問を少し変えてみます。

今、深刻な伝染病が拡がって、10,000人が感染しているとします。

A対策:新薬を開発します。2,000人分しか作れないので、8,000人は確実に死にます。

B対策:8,000人を収容できる施設を建設すれば、収容した人の25%は助かります。

どうでしょうか?同じ内容ですが、これならB対策を選ぶ人が多くなりそうです。

 

経営者の皆さんも心理学について、勉強する機会があるとよいかも知れません。

ちなみに上の設問は、「~確実に助かる」と「~確実に死ぬ」という表現の仕方を変えただけで意思決定の結果が変わるということです。「フレーミング効果」と言うそうです。