韓国のMERS感染も終息の兆しですが、感染症に対する会社の対応について考えます。
いくつかの新しい感染症が話題になっています。
MERS(中東呼吸器症候群)は、2012年に発見された新しい感染症です。ヒトコブラクダが宿主と言われていますが、実際のところはよく分かっていません。現在のところ、ワクチンや治療法が確立していないので、危険です。
韓国でのヒト-ヒト感染拡大によって、飛沫感染で流行することが懸念されています。ただ、インフルエンザよりも感染力は弱く、病室などでの濃厚接触が流行の原因と考えられています。
デング熱は、昨年の夏に日本でも感染者が発見されて話題になりました。流行地域である熱帯地域からの帰国者から蚊を媒介して感染が広がりました。ヒトー蚊-ヒトと感染していくので、媒介する蚊(ネッタイシマカなど)を駆除することも対策になります。
エボラ出血熱はコウモリが宿主です。ヒト-ヒトの感染は、直接接触(体液や血液の接触)によって起こり、致死率が高いことが知られています。近年の西アフリカ地域での流行は、これまで知られているものの中で最も大きいものです。日本での流行は無さそうです。
世界的に大きな被害を出した感染症としてはHIV(エイズ)があります。日本でもこの2007年以降は毎年1000人を超える感染者が出ていますから結構大きな問題です。HIV感染は、性的接触(特に同性間の性的接触)が主な感染経路です。
いろいろな感染症がありますが、気にしなければならない感染症はなんと言っても「インフルエンザ」です。インフルエンザが直接の死因とされるケースはHIVと同じく、年間1000件を少し超えるほどですが、実際は肺炎などを併発して亡くなるケースはよほど多いようです。
従業員がインフルエンザと診断された場合に、どう対応していくのでしょうか?ケースバイケースなのですが、少し考えてみます。
社内に感染者を拡げないために、一番安全サイドの対応をしている例は、「”発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで”出勤を停止して、その間の手当を支払う。」というものです。この期間は学校保険安全法で定められている基準です。
普通の会社あるいは普通の会社員で、この基準を適用できる例は限られると思います。
生産性を損なって会社の収益にもダメージですし、社員もこんなことを申し渡されたら日頃からたいした仕事をしていないようでかなりへこみ増す。在宅で仕事ができればよいのですが、昨今はネット経由の情報流出という問題があって家庭のパソコンから会社のサーバーへアクセスできる環境を持っている人も少ないでしょう。
では、どうするのか?
厚生労働省のインフルエンザに関するサイトなどを閲覧してみましたが、はっきりしません。
また、労働安全衛生法で法的に就業を禁止する疾病にもインフルエンザは含まれていません。(強毒性の新型インフルエンザは含まれます。他には、結核やコレラなどがあります。)
したがって感染拡大を防止する現実的な手段としては、就業が可能な程度に回復している従業員(感染者の懸念のある人を含め)にマスクを着用してもらう。会社における感染の大半は会話を通しておこるので、座席の配置を変えてもらう。会議は延期にしたり、テレビ会議に変更する。などが有効なようです。
隣国の韓国でのMERSの流行は、感染症をリアルに考えられる機会です。冬場のインフルエンザ流行に向けて、会社でいろいろなオプションを考えてみてはいかがでしょうか。