ユネスコ(UNESCO)の「世界自然遺産」「世界文化遺産」はよく知られています。
国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」も知名度が低いですが重要です。
「世界農業遺産」は、正式には「Globally Important Agricultural Heritage Systems」と言い、頭文字をとって「GIAHS(ジアス)」と呼ばれています。
国連食糧農業機関(FAO)が認定するもので、”社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農業システム”というのが定義です。
現在、FAO/GIAHSのホームページによると14か国32サイトが認定されています。
中国のハニ族の棚田、インド・カシミールでのサフラン栽培、タンザニアのマサイ族の牧畜、ペルーのアンデス農業などです。
日本からは次の5か所が認定されています。
「トキと調和した佐渡の里山」新潟県佐渡地域
「能登の里山と里海」石川県能登地域
「静岡の伝統的な茶葉統合システム」静岡県掛川周辺地域、
「持続可能な農業のための阿蘇草原の管理」熊本県阿蘇地域
「国東半島宇佐の林業、農業、水産の統合システム」大分県国東半島宇佐地域
日本ではUNESCO「世界遺産」でも、認定されたときには大きな盛り上がりを見せますが、認定は”ゴール”でなく、”はじまり”です。
島根県の岩見銀山の例では、世界遺産登録前の年間観光客30万人が、登録後の平成20年には80万人に一気に増えました。今はまた、元の30万人台(少しは増えています)に戻っています。観光資源と考えるのではなく、本来の「顕著な普遍的な文化価値」を残していくということが重要です。
世界農業遺産も、認定によって行動計画を作成することになります。
グリーンツーリズム等の農業・農村振興施策を推進するとともに、伝統的な農業・農法や豊かな生物多様性などを次世代に確実に継承していくことが大切です。