EU経済はものづくり大国の底力を示しているドイツの一人勝ちになってきています。
ドイツ経済好調の要因を、EU拡大によるユーロ為替の安定や、東欧や南欧から流入する熟練労働者の低賃金長時間労働だと言う人もいますが、やはり「ものづくりの力」が最大の要素です。
ドイツの強みは、大きく三つあります。
一つは、技術を重視する中小企業がクラスターをつくってものづくりの支えになっていること。腕のよい職人が尊敬され、高い処遇を得る伝統が生きています。
二つは、世界的な一流企業が中国など新興国市場の需要に適合した製品をタイムリーに設計して、国内生産と現地生産のバランスを取りながら売り上げを上げていること。
三つは、中小企業と一流企業の関係が良好で、効率的なネットワークをつくっていること。社会民主党との大連立となった第三次メルケル政権の賃上げ政策が奏功して内需も拡大しています。
そういうドイツですが、現在のリードを保つために「インダストリー4.0」と呼ぶ技術革命を進めています。例えば、ドイツ中にある生産設備、製品、部品、素材の一つ一つにIDをつけて、すべてインターネットでつなぎ、ドイツという国を仮想した1つの工場として使うというような構想です。現在の電子技術を持ってすれば技術的な課題はほぼクリアされていますから、決して夢物語ではありません。実行する(調整する)力が国や企業(と企業群)にあるかどうかです。
もう一つのものづくり大国である日本ですが、中国をはじめアジアの国々にも追い上げられています。日本でも、新たな産業革命が必要な時期に来ています。中小製造業でも、その心構えや準備が大切になっています。
折しも、イコモスが「明治日本の産業革命遺産」をユネスコの世界遺産に登録することを勧告してて、登録される見込みになりました。山口県では萩城下町や松下村塾も対象です。
幕末から明治にかけての日本では、歴史的に観て奇跡的な短期間で産業革命が成し遂げられました。そこには、いろいろな要因があります。改めて歴史に学びたいものです。