間一髪で大きな被害にならなかった事例は、ともすれば忘れられがちです。しっかり、分析して差対策をとらなければなりません。
昨年9月の御嶽山の噴火は、戦後最悪の火山災害となりました。多くの映像による記録も残っていることから、人々の記憶から消えることはありません。その後、火山防災への取り組みが全国の火山でおこなわれ、何度も報道されています。昨日は、蔵王山にはじめての火口警戒警報が出されて、また御嶽山噴火が記憶に新たになっています。
もともと火山防災は周辺住民を対象にしたもので、登山客のことはあまり考えていなかったように思います。御嶽山の噴火は、日本の百名山のうち、半分が火山で、その7割は活火山ということもあり、登山客の安全を考えるきっかけになりました。
しかし、御岳山の噴火は科学的にはとても小さい規模の噴火でした。9月の晴天の土曜日の正午というタイミングでなければ、ほんの数時間ずれていれば、新聞でもベタ記事扱いになっていたと思います。
JR山手線の支柱倒壊は、金曜日に異常を発見していたが土日は人手が足らないので月曜日までは大丈夫だろうと判断していたところ、日曜日の朝に倒壊してしまった。という事故です。御嶽山と逆に、ほんの数時間ずれていれば大参事になっていた可能性があります。
徳島空港の管制ミスは、海上自衛隊の管轄下で一人しかいなかった管制官が滑走路上の作業車の存在を失念したという事故です。着陸しようとしたパイロットが視認して、着陸やり直しをしなければ、こちらも大参事になっていました。
人間が活動する以上、ある確率で事故はおこるものです。一方で、人間は忘れる動物でもあります。現実に被害が発生した事故は覚えていて、いろいろな対策を取っていきます。それは、ときには過剰で過激な行動に発展することもあります。
例えば、火山に登山をするときにはヘルメットを着用するべきだとか・・です。まぁ、それでも気にかけていくだけよいのかもしれません。
問題は、今回の2件のように実際の被害が小さかったケースです。どちらも、国交省の事故調査がおこなわれるわけですが、その情報をしっかり確認して、分析結果を今後に活かすことがたいせつです。災害事例分析では、4M5Eという手法を使います。
今回の2件は、4Mのうちで最もやっかいな「management」に関わる要因が強く、対策も5Eのなかで時間のかかる「enforcement」に関わるものが多くなります。
現場としては、しんどい活動になりますから、組織がしっかりフォローすることが求められます。また、社会としても関心を持って見守ることが重要です。