「売上高=単価×客数×頻度」ですが、利益を上げるのに、最も重要なのは「単価」です。
「早い安い旨い」とか「毎日低価格」とか、「客数×頻度」を上げて儲ける会社もたくさんあるのですが、これらは大企業です。中小企業が考えないといけないのは「単価」です。
会員制高級家具販売会社で経営者の親子喧嘩が話題になっています。
高品質低価格を謳う量販家具店の台頭とか、消費者のカジュアル嗜好とか、いろいろな原因で業績が伸び悩んでいるという説明です。
この会社が、お父様の時代に大きな利益を上げていたのは何故かと言えばやはり「単価」です。
高級家具と銘打っても、原価がすごく高いわけではありません。汎用品の2倍の原価の家具を、10倍の値段で販売するというイメージでしょうか?
100円ショップのネクタイの製造原価は40円、駅で売っている1000円のネクタイは50円、ブランドもの2万円のネクタイは60円という話を聞いたことがあります。<真偽は謎ですが、当たらずとも遠からずかと思います。>
さて、何故に高い単価で販売できるのか。その原因は、親切で丁寧な商品説明や、会員制で選ばれた人という優越感などと説明されますが、それだけではないようです。
ダン・アリエリの行動経済学のベストセラーに「人は予想通りに不合理」と言うのがありますが、家具に関して、人が不合理な判断をするのは人生で2回ありそうです。
一つは、(自分の・子供の・孫の)結婚です。いつもは、機能・デザインと価格について合理的な判断ができる人でも、ハレの機会だと、つい値の張る家具を買ってしまいます。「人生で一度だけのことだから」「愛する妻(夫・子・孫)のためだから」、と言って不合理な行動を正当化します。
二つは、家を新築したときです。同じように、折角の新居にふさわしい家具にしたいと思います。更に、このときには「アンカリング効果」も働きます。アンカーとは基準のことで、新築費用が2000万円とすれば、2000万円を基準にした家具の値段を考えてしまいます。(2000万円の借金をしたのだから節約しなければ・・のほうが本当は合理的なんですが。)
日本では、この「予想通りに不合理」な判断をする機会が減ってきたのが、家具販売会社がビジネスモデルの転換を余儀なくされた要因です。
20年前と比較してみると、結婚件数は80万組から65万組に減って、離婚は20万組から23万組に増えています。結婚が減ったうえに、3組に1組以上が離婚して「一生に一度」のこととも言えなくなっています。また、住宅の新築件数は150万戸から90万戸に減っています。
今回のビジネスモデルの転換がどうなっていくかは、図らずとも世間の注目を浴びることになりました。長期に見守りたいと思います。