太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用には、電力貯蔵の安全性向上が必要条件です。
再生可能エネルギー(再エネ)の活用を拡げていくことの重要性は一層高まっています。
しかし、再エネで生産される電力には、地熱やバイオマスなど発生量を制御できるものと、太陽光や風力など自然任せのものがあります。残念ながら、太陽光や風力による電力供給は需要とマッチしません。
そこで、需給のバランスをとるためには電力貯蔵が重要なポイントになります。この目的での電力貯蔵には、高い密度で大きなパワーが求められます。そうすると、現実的には「揚水発電」と「化学エネルギーによる蓄電池」しか選択肢がありません。
揚水発電は電力を水の位置エネルギーとして貯蔵します。水を上流から下流に流して折角発電したのに、また下流から上流に水をくみ上げて発電するので、なんとなく意味が無いように思う方がいます。しかし、ほとんどの日本の揚水発電所では自然流入の水を発電に使いませんから、純粋に電池と考えて構いません。どんな蓄電池でも放電などでロスがあります。揚水発電所を電池と考えた場合の効率は約70%と意外に高いのです。
化学エネルギーを使う蓄電池では、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池がよく使われます。モバイルや電気自動車などだけでなく、携帯電話の基地局などから始まって定置型の用途にも広がっています。化学エネルギーでは水素吸蔵合金型のニッケル水素電池や、NAS(ナトリウムー硫黄)電池、レドックスフロー電池など多くの形式が開発されています。
希少な資源を使うものも多く、コストが大きな課題ですが、ごく基本的に言って密度が高くて、大きなエネルギーを蓄える電池ほど安全性が劣ります。密度・容量と安全性は、原則としてトレードオフの関係にあり、これを解消することは困難です。
今後の電力貯蔵においては、このバランスをどうやって折り合いをつけるかが課題です。日本の場合、完全な安全を求める議論に終始する場合があります。しかし、本来、エネルギー(力)とは、まとまると危険なものです。