カープ黒田の経済学

 カープの背番号15が8年振りに帰っていました。ファンとしては歓喜のときを迎えています。


 2015年。広島カープがセ・リーグを制覇する可能性はかなり高いと思います。黒田博樹がメジャーリーグでの偉大な実績を持って広島に復帰しました。絶対的エースのマエケンが残留し、私のイチ押し福井が好調です。投手陣に全く心配はありません。

 打撃陣も菊丸に不安が無いですし、会澤ツバサが大きく羽ばたきそうです。また、これも私のイチ押しドウダ林が結婚を機に大ブレークの予感がします。外国人選手も仮にブラッドが大コケしても、オサムをはじめバックアップは万全です。

 更に監督もノムケンからオガタンに代わりました。オガタンはちょっとKYのところもありますが、賢い采配をすると思います。・・ということで、何とか今年こそ。の思いです。

 

 黒田はMLBに残留すれば20億円の年棒だったと言われます。ヤンキースでの2014年が1600万ドル(約18.7億円)でしたから、球団を変われば20億円は簡単にゲットできたでしょう。

 その黒田が広島カープに年棒4億円で契約しました。4億円はカープの歴代最高年俸ですし、決して少ない金額ではありませんが、その差16億円という巨額報酬を捨てて広島復帰を決めた黒田の心意気は広島ファンならずとも、野球ファンならずとも、感激しているものと思います。

 

 ところで、何故にヤンキースと広島カープでは支払える年棒にこんなに大きな差が出るかを考えます。あらゆる価格を考えるときには、需要曲線と供給曲線を使います。需要曲線とは需要が増えるほど(その商品を欲しいと思う人が増えるほど)価格は上がっていくという右上がりの曲線です。一方の供給曲線とは供給が増えるほど(その商品を売りたい人が増えるほど)価格は下がっていくという右下がりの曲線です。自由経済の下では、二つの曲線の交点がその商品の価格になります。

 

 今回の黒田の年俸を決めたのは、主に需要曲線が米国と日本を比較すると日本のほうが下方に移動(つまり需要が少ない)していることによります。MLBの全選手の年俸総額は3900億円で、日本のプロ野球選手の年俸総額は333億円です。およそ11.5倍の差になります。アメリカの人口と日本の人口は2.5倍(球団数も日本が12で米国は30でちょうど2.5倍です。)違いますから、それで割ると約4.5倍になります。

 大雑把に言えば、アメリカと日本ではプロ野球に対する単位需要(国民一人当たりの関心度)が4.5倍違うと言えます。これが、黒田がMLBなら20億円であり、広島カープなら÷4.5で4億円となる根拠です。つまり消費者余剰が生産者余剰を上回っているわけでも、広島カープがケチなわけでもありません。(「巨人だったら、もっと出す」と言われそうですが、あくまで自由経済の下で。)

 ちなみに、日米それぞれのトップ球団である巨人の年俸総額は46億円でレッドソックスは232億円で約4.5倍です。尚、日米の最下位を比べると広島の21億円(巨人の46%)とアストロズの51億円(レッドソックスの22%)です。やはりアメリカは格差社会ですね。

 

 これらのことは、ビジネスにおいて成功するには需要があるところを探すことが重要であると示しています。需要がないところに持ってきていくら商売をしようと思っても駄目です。力量が伴うのであれば、大きな市場(MLBのような)を目指すべきです。

 つまり売れる商品ができたならば、買いたいと思ってくれる人を見つけ出すことに全力を上げるべきです。少し言葉を替えれば、ビジネスにおいてはニーズを見出す努力を、シーズを作り出す努力以上に行わなければならないということです。

 

 今日はもう一つ。企業において「価格」を決めることは最も重要な意思決定です。「価格計画」は一般的な教科書には3つのアプローチが書いてあります。それぞれ、「コスト志向的価格決定方式」「需要志向的価格決定方式」「競争志向的価格決定方式」です。

 解説は省略しますが、あなたの商品が顧客に誇れるような(黒田的な)モノであるなら、このいずれの方式もとらないで、「需要と供給の均衡」から決定することが優ります。

 

 それでも黒田は戻ってきました。決して合理的な判断とは言えませんが、それが人間の面白いところです。今年のマツダスタジアムは全試合が真っ赤に染まって、秋には日本一の美酒に酔うことを祈念しています。<<がんばれ黒田・がんばれカープ・がんばれニッポン>>

 

 すみません。長文になってしましました。