普段観ることはないのですが、偶然に報道ステーションの音声が耳に入りました。
経産省の元官僚であった古賀さんという方がコメンテーターで、「日本政府は、原発のために湯水のようにおカネを使っているが再生可能エネルギーについては何もやってない。中国では風力が原発を抜いている。なんか恥ずかしくなってきました。」という趣旨の少し煽動的な発言をして、それを受けて、古館キャスターが意味不明ながら同意をするという流れでした。
私も再生可能エネルギー導入の試算をして経済性評価をする仕事を何度かしました。実際に導入につながった事例もあり、再生可能エネルギーが普及することを推進する立場です。しかし、あたかも風力発電が原子力発電の代替になるかのような話を垂れ流しにされるのは、再エネ普及にはマイナスだと感じます。
風力発電に関して理解すべきごく簡単な事項は・・・
1) 風力発電の設備導入量は発電量を意味しません。
⇒原子力発電所の定格100万kwは実際に100万kwの発電をします。風力発電は風況が
よくて風力最大のときに定格まで発電しますが、めったにありません。
風がある程度(普通は秒速3m以上)吹かなければ発電はゼロです。一般家庭の何戸分
を賄うという広告がありますが、これは違法すれすれと思います。風力発電では1軒の
電力も賄えません。
2) 発電量が非常に短時間で変動しますので、大きなベース電源が別に必要です。
⇒太陽光も変動しますが、風力の変動はもっと過敏です。
発電量の変動は電力の品質の変動なので、それを吸収する必要があります。
蓄電池をつければよいという人がいますが、コスト云々ではなくて大きなエネルギーを
高濃度で貯めこむのは今の技術では危険です。原発反対の人が言うことではないです。
3) 大型風力発電の適地が日本には限られます。
⇒大型風力発電には広大な敷地が必要です。福島第一原子力発電所6号機と同じ発電量を
賄うには東京23区の広さが必要です。よく原発が安全なら東京に設置すればよいと言う
人がいましたが・・。田舎は人が少ないから風車を並べてもよいとは言えません。
風車は騒音も大きいですし、今の技術では危険もあります。地元住民からは反対の意見
が出ますから、真摯に対応しなければなりません。
4) ・・・ 他にもいろいろあります。
言いたいことは、再生可能エネルギーは決して原子力発電の代替にはならないけれど、それを補完して、地球温暖化を遅らせることができるということです。
地域の資源を活用したり組み合わせることで、人々の暮らしを豊かにして、元気にすることが期待されます。根拠のない極端な話をするのは、堅実な改革を妨げます。正確な知識で合理的な計算をしたうえで、確実に導入していくと言う地道な歩みを続けていくことが必要です。。
そういう前提で考えるならば、風力発電は大いに期待される技術であり、導入する余地は大きいです。小規模~中規模で革新的な構造や製造技術、管理システムや系統連系の新しい仕組みがどんどん産まれています。今後も目が離せません。