報復の連鎖と信頼関係

コーチングのセミナーでは「信頼」を3つの段階に分けて教えます。

 

第一段階 「抑止」にもとづく信頼。 

報復を恐れて、相手の信頼に応えようとする関係。

 

第二段階 「よく知ること」にもとづく信頼。 

お互いをよく理解しており、相手の行動が予測できることにもとづく関係。  

 

第三段階  「同一化」にもとづく信頼。  

一方が他方の代理ができるほどに感情的なつながりのある関係。

 

 

会社に入りたてでは、第一段階の信頼(係長に叱られないように、遅刻はしないで、仕事は納期通りに・・)ですが、徐々に第二段階、第三段階と進んでチームとしてよい仕事ができるようになるということです。

 

素晴らしい接客を受けた買い物客が、おつりを多くもらった場合には、それを指摘しておつりを返すことがあります。逆にぞんざいな接客だと、そのまま持ち帰ることがあります。

これは、報復欲求が人の本能だと言うことです。同じような違反をしても、権威のある人ほどバッシングされるのはよくあることですが、これなども報復欲求の一つの表れです。

 

しかし、信頼の第一段階は報復に対する恐れから始まります。報復には社会の信頼関係を保つ働きがあるとも言えます。報復と信頼は表裏の関係にあります。

 

フエルの実験というのがあります。

例)主宰者は、6人の人に千円札を10枚づつ渡します。

「この箱に好きなだけお札を入れてください。箱に入ったお札を倍にして皆さんに返します。但し、6人は話をしたり合図を送ったりしてはなりません。このゲームの回数は既に決まっていますが教えません。最後のゲームのときは箱に入っているお札は主宰者がもらいます。さぁ、箱にお金を入れてください。」

どうですか?

 

1回目には、6人がお札を1枚づつ入れたとします。6枚のお札は主宰者によって12枚になって、2枚づつ6人に戻されます。

2回目には、5枚づつ入れたとします。60枚のお札が、10枚づつ戻されました。みんな16枚のお札を持っていることになります。6人の間に緩やかな信頼関係が生まれました。

 

3回目には、3人は10枚入れましたが、3人は1枚も入れませんでした。主宰者によって60枚のお札が10枚づつ6人に戻されました。信頼関係はあっけなく崩壊しました。

 

4回目には・・・ 主宰者が箱を除くと1枚のお札も入っていませんでした。

5回目を前にして、主宰者は言います。「あなたが私にこっそりとお札を1枚くれたら、あなたより少ない枚数しか箱に入れなかった人に、お仕置き(報復)をしてあげます。」

という実験です。

 

あなたなら、5回目の箱に何枚のお札を入れますか?

そして、主宰者に1枚のお札を渡しますか?