登山する人は知っていますが、方位磁石の針は真北を指しません。
方位磁石の針が指すのは北極点ではなくて、北磁極と言われる場所です。現在の北磁極は北緯79°44′でグリーンランド島の西側海上にあります。普通に思っているより、随分と南にあります。
したがって、日本では方位磁石の針は北に行くほど、西向きにずれます。偏角と言いますが、北海道では約10°西を指し、沖縄では約5°西を指します。
この磁極は常に動いています。伊能忠敬が日本地図を作った1800年頃は北磁極と北極点はほぼ同じところにあったので、方位磁石はほぼ真北を指していました。その後、偏角は西向きに大きくなっていっています。それ以前、江戸時代初期1650年頃の偏角は東向き8°だったことが判っています。
地球内部の溶けた鉄の流れが地磁気の原因なのですが、この小さな方位磁石だけからでも、ダイナミックな運動の様子が感じられます。
地球磁場は少なくともこの200年間はずっと減少しています。この影響は、地磁気を利用して飛んでいる渡り鳥などに出てきます。特に、磁場強度の低下が著しい南米ブラジルなどでは、迷子になる渡り鳥が増えているそうです。
また、地球では、いつも磁石のN極が北を指すわけではなくて、磁極が入れ替わる地球磁場の逆転が周期的に起こります。最後の逆転がおこったのは約78万年前ですが、これはかなり長い期間と言われます。それまでは、もっと頻繁に逆転が起こっていたようですから、近いうちに逆転が起こるかも知れません。まぁ、近いと言っても何万年先でしょうが。
この地磁気の減少と磁場の逆転こそが、地球環境問題だと言う人もいます。