たまたま、勉強会でゴールドラットの「制約条件の理論」に話が及んだので・・
ザ・ゴールのシリーズに「チェンジ・ザ・ルール」があります。原題は、「必要だが十分ではない」です。ERP(統合業務パッケージ)を導入したけれど効果が上がらなかった事例を挙げて、制約条件の理論について解説しています。
そのなかの一つのエピソード。
3000人が働く大工場で、20人のスタッフが1か月単位の生産計画を作っていました。そこで、資材購入から製造して顧客に届ける物流ルートまで、完全に管理可能なERPを導入しました。ERPの導入には、大きな資金と長い期間、外部のエンジニアと内部のスタッフの膨大な時間と労力を必要でした。
ついに、大工場のERPシステムは完成し、コンピューターシステムには各部門からのデータが毎日入ってくるようになりました。これによって、20人のスタッフがやっていた生産計画を作る仕事は、1人でしかもたった1日でできるようになりました。20人×30日=600人・日が、1人×1日で完成します。すごい成果があがりました。
しかし、会社の業績には何も変化がありませんでした。むしろ悪化してきているように見えます。
20人のスタッフが退職したわけではなく、他の部門に異動しただけですから3000人の人数(人件費)は変わりません。オペレーターは、データ入力の仕事が増えたと文句を言います。大きなコンピューターシステムはメンテナンスも必要です。導入にかかった費用は銀行から借りたので、利子をつけて返さないといけません。
社長は工場長に問いただします。大金をつぎ込んだのに業績が悪化しているのは何故だ!
工場長は答えます。工場はERPを導入してくれなんて言っていません。本社の企画部門が言い出したことです。だいたい工場ではコンピューターなんて面倒なものは・・・・モゴモゴ。
社長は怒って、企画の責任者を呼びつけて・・・
勘の良い方はわかったと思いますが、この工場ではERP導入した後も生産計画を1か月毎に立てていたのです。ERPを導入して、20人を1人に減ることではなく、30日が1日に短縮できることに着目しなければなりませんよね。そのことに気づいて、毎日生産計画を見直すようにしたら、工場の業績は劇的に改善していった。
実際の会社でも似たような事例は結構ありそうです。